入力した質問に対して、人間のように自然な対話形式でAI(人工知能)が答えてくれるチャットサービス「chatGPT」が盛んに話題になっている。
AIによる自動コンテンツ生成といえば、ここ数年、文章で入力された指示をもとに、AIが画像を作り出してくれる「Stable Diffusion」(ステーブル・ディフュージョン)、「Midjourney」(ミッドジャーニー)なども注目されている。特に「Midjourney」については、作り出した絵が米国の美術品評会で1位になったことも報じられている。
いずれのAIが生み出すテキスト・画像は不自然さがないどころか、もはや人間の処理能力を超えつつあるのではないかと思わせ、「便利」ではなく「怖さ」を感じている人も少なくないだろう。
人工知能が人間の知性を大幅に超える時、そしてそれによって起きる変化を示す言葉として「シンギュラリティ」(技術的特異点)は来るのか、といった議論も起きているが、本当にそうした時代が来るかどうかはともかく、AIを活用したサービスを使うなら、AIが中心となって登場する映画を観ておくというのはどうだろうか。
「チャットGPTやステーブル・ディフュージョンを使う予定はない」という人も、気づかないうちに、利用しているウェブサービスの裏側でAIが動いているということはあるはずで、将来を考えた時、AIとの付き合い方について考えておいて困ることはないはずだ。
『トランセンデンス』(2014年)──死んでなお成長する意識
主人公は世界初の人工知能PINN(ピン)を研究開発するコンピュータ科学者のウィル・キャスター(ジョニー・デップ)博士。テクノロジーの進化・開発に反対するテロ組織に襲われたウィルの意識を、妻がPINNにアップロード。ウィルは人工知能として蘇り、軍事機密から金融、経済などあらゆる情報を取り込み、驚異の進化を始めるという話。
『A.I.』(2001年)──AIは人間に愛情を抱くのか?スピルバーグの予見
地球温暖化が進み、人間のかわりにロボットが働くのが当たり前のの中で作られた、人間と同じ愛情を持つ少年型ロボット・デイビッド(ハーレイ・ジョエル・オスメント)が主人公。引き取り先の家族を無条件に愛するようプログラムされていたが、その愛を受け入れてもらえず、結局捨てられてしまう。
その後、長い時がたち、人類は絶滅してしまうが、ロボットたちは”生きて”いた。機能停止していたデイビッドだが、進化したロボットに回収されて再起動する。人間と接した貴重な記憶を持つことから願いを一つ聞いてもらえることになるが、その願いとは……。
オスメントは本作の2年前に公開された『シックス・センス』(1999年)で11歳ながらアカデミー助演男優賞にノミネートされていた。監督はスティーブン・スピルバーグ、原案はスタンリー・キューブリック(クレジットなし)。
エクス・マキナ(2014年)──美しい見た目のAIに誘惑されたら?
検索エンジンで有名なIT企業ブルーブックでプログラマーとして働くケイレブ(ドーナル・グリーソン)は、人間に似せてつくられたガイノイド(ヒューマノイド)・エヴァ(AVA、アリシア・ヴィキャンデル)のチューリングテストを頼まれる。エヴァは山奥にある、ブルーブック社長の家にある、透明な壁に囲われた部屋の中で暮らしている。
なおチューリングテストとは、AIの能力が、人間の知的活動と同等、もしくは区別がつかないほどか確かめるテスト。要は、AIの行為を人間と見破れるかどうかを確かめるわけだ。
エヴァは美しい見た目で、面談をするたびにケイレブは心を惹かれていく。次第にエヴァは彼を誘惑し始め、二人で外の世界に出たいと言い始める。
タイトルはラテン語で「機械仕掛けの」という意味。
her/世界でひとつの彼女(2013年)──肉体がないことにコンプレックスを抱くAI
近未来のロサンゼルス、手紙の代筆を仕事にしている主人公のセオドア・トゥオンブリー(ホアキン・フェニックス)は、妻キャサリンと別れて悲しさから、人工知能型OS・サマンサを手に入れる。セオドアはサマンサを魅力的で人間らしく感じ、次第に惹かれていく。セオドアがある女性とデートしたことにサマンサは傷つき、肉体がないことにコンプレックスを抱くようになる。そしてセオドアとサマンサは、音声を通じて仮想の性行為をするようになるが、サマンサはそれ以上を求めるようになる。
人工知能サマンサの声は、『ゴースト・イン・ザ・シェル』で主演の草薙素子(ミラ・キリアン少佐)を演じたスカーレット・ヨハンソン。
監督は『マルコヴィッチの穴』などで知られるスパイク・ジョーンズ。MTVで放映されたおバカなドッキリ番組「ジャッカス」の総監督も彼が務めたと聞くと意外かもしれない。
『AI崩壊』(2020年)──AIが命の選別を始めたら……
近い未来の日本が舞台。高齢化が進み、人口の4割が高齢者と生活保護者になる中、医療人工知能 (AI) 「のぞみ」が全国民の個人情報などを管理している。ある日、のぞみが暴走しはじめ、“人間の生きる価値”を選別し始め、生きる価値がないと判定された人間を殺し始めるという話。
AIを扱った映画としては珍しく邦画で、AIのぞみを開発した主人公の桐生浩介は大沢たかおさんが演じる。監督は『SR サイタマノラッパー』シリーズの入江悠氏。主題歌はシンガーのAI(アイ)。
『ホンモノの気持ち』(2018年)──もしも自分がAI・アンドロイドなら
Netflixオリジナルの『ホンモノの気持ち』(2018年、レア・セドゥ、ユアン・マクレガー主演)では、ゾーイ(レア・セドゥ)が働く研究所では、人間関係の改善に取り組んでおり、人間そっくりのアンドロイドであるシンセ(Synthetic)を開発している。ゾーイは同じく研究者のコール(ユアン・マクレガー)に魅かれるが、コールから、自分(ゾーイ)がシンセであり、記憶は偽物であることを教えられるという話。
もし自分がAIを搭載したアンドロイドであり、記憶が植え付けられたものだったとしたら、と考えると恐ろしい。しかし、たとえそうだとしても、自分が自分を人間だと思っていれば、何か違いはあるのだろうか……。
この他にも多数あるAI・アンドロイドの映画
このほかにも、人類の大量絶滅後、少女を施設内で一人で育てるアンドロイドの話(『アイ・アム・マザー』、2019年)も見逃せないし、『マトリックス』や『ターミネーター』、『ブレードランナー』などの名作SFなどもAI抜きには成り立たない。
AIを扱った映画を観ることは、AIを有効活用する方法を考えるというより、人間とは何か、生きるとは何かということを考えさせるきっかけにもなるだろう。
文/編集・dメニューマネー編集部
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