相続人が争わないよう、暦年贈与など事前にできる対策を、この連載で解説してきましたが、それらを行ってもなお争いが起きる心配が消えない人は、次の3つの方法を検討しましょう。この方法には税金面でのメリットはありませんが、揉める可能性を減らせるでしょう。
1 暦年贈与以外の「生前贈与」を使う
まず考えたいのは、被相続人(財産を遺す側)名義の土地に相続人(子供など財産を受け取る側)がマイホームを建てて住んでいる場合などに、2,500万円まで贈与税がかからない「相続時精算課税制度」を使うことです。
これは、暦年贈与以外の生前贈与ともいえる制度で、特に地方では、上で挙げたようなケース(親の土地に子供が家を建てて住んでいる場合)が多く、このような場合は“争続”対策として有効です。
相続時精算課税制度では、2,500万円までの財産を贈与税をかけずに受け渡しできます。被相続人が亡くなった後で、事前に渡した財産(贈与時の価格)と、相続財産を合計した金額から相続税額を計算して納税します。
計算した結果、相続税の支払いが必要な場合がありますが、相続税がかからない場合、生前に渡した財産に税金がかかることはありません。
ただし、一度この制度を使うと暦年贈与をすることはできません。かりに贈与税がかからない範囲での贈与であっても、贈与を受けた度に贈与税の申告が必要です。
2 遺言書を書いておく
遺言書を書いておくのも1つの方法です。相続対策といえば遺言書というイメージがあるかもしれませんが、実際はあまり使われていません。
遺言には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類あり、遺言の有効性が認められる可能性が最も高いのは公正証書遺言ですが、これを実際に書いている人は全体の1.3%しかおらず、75%以上が遺言書の作成意向がありません(日本財団。2021年1月5日公表)。
公正証書遺言は証人が2人必要な上、費用もかかります。
3 家族に財産を任せる(家族信託)
遺言書よりもっと柔軟に相続争いを防ぐ方法として、家族へ特定の財産を任せる契約を結ぶ方法があります。これを家族信託といいます。遺言書では指定できない、被相続人が亡くなった後の孫などへの相続(二次相続)まで、財産の行き先を指定できます。
生きている間に、被相続人が財産の分割を相続人に対して行いたい場合に有効です。
相続対策は事前準備で成否が決まる
相続で損をしないためには、事前の準備が必要不可欠です。被相続人が亡くなる直前に慌てて準備をしても相続税を効果的に減らすことはできませんし、 “争続” になる可能性もあります。終活という言葉もあるように、被相続人が元気なうちに相続対策を始めましょう。
文・北川真大(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
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