石油元売り大手コスモエネルギーホールディングス <5021> が2023年6月の株主総会で、株主である投資ファンドからの買収防衛策について、「マジョリティー・オブ・マイノリティー(MoM)」という異例の方法で株主に賛否を問いました。結果として、投資ファンドからの提案は否決されています。
この手法が異例とされるのは、ほとんど事例もなく実務上も取り扱いが定まっていないためです。報道でも、新聞輪転機メーカーの東京機械製作所が2021年10月、買収防衛策導入時にとったのに次いで2例目とされています。
少数派の中の大多数だけで決めるやり方
「マジョリティー・オブ・マイノリティー(MoM)」は、直訳すると、「少数派(マイノリティー)の中の大多数(マジョリティー)」。採決にあたり、少数株主(マイノリティー)の過半数で賛否を決められる方法です。
コスモHDのケースでは、旧村上ファンド代表の村上世彰氏が強い影響力をもつ投資会社「シティインデックスイレブンス」などが20%以上の株式を保有する大株主です。2023年春に、社外取締役の選任を提案したもののコスモ側は反対を表明し、その後、買収防衛策を講じる旨を公表。これに対してファンド側も、山田茂社長の解任(再任反対)を求めていました。
コスモは買収防衛策の発動について、同ファンドや、村上氏の長女で株主の村上絢氏らを参加させないMoMという形で株主総会にはかることにしました。
結果として6月22日の総会で、ファンドの提案は否決され、買収防衛策の発動については可決されています。
「正当性を欠いた無効の決議」と「一般の株主が不利益となる」
報道によると、ファンド側は総会後にコメントを発表し、「株主総会で選ばれた経営陣が自分たちの気に入らない株主の議決権行使を認めないのは、到底許されるものではない」「正当性を欠いた無効の決議」としました。
総会でも、MoM決議について株主から「株主平等の原則に反するのではないか」などの質問があったそうですが、コスモ側は「大規模買い付け行為者から企業価値をどう高めるか具体的に示されない中で株を買い進められると一般の株主が不利益となる」などと説明したと報じられています。【お金の単語帳】