超富裕層の資産増加に対する「真の税率」は極めて低く、2014年から2018年までの間にイーロン・マスク氏は3.27%、ジェフ・ベゾス氏で0.98%、ウォーレン・バフェット氏の税率は0.1%だったそうです。
これは非営利の米報道機関プロパブリカが2021年6月に暴露した、超富裕層たちの納税記録です。
この報道がどこまで正しいのかは分かりませんが、富裕層たちがあの手この手で節税を行っていることは周知の事実です。今回は、多くの富裕層が密かに行っている「一代飛ばし」という節税策について紹介します。
節税策「一代飛ばし」とは?
「一代飛ばし」とは、相続税負担を圧縮する節税策です。
その名の通り、資産承継を一代飛ばすことを指します。例えば、資産家の祖父(被相続人)が自分の孫を養子にして、自分の子どもだけではなく、孫にも資産を相続させるケースが想定されます。
また、祖父母が孫へ資産を贈与する(=資産を一代飛ばして移転させる)ことを「一代飛ばし」と呼ぶこともあります。今回は、「孫を養子して資産を相続させるパターン」について考えてみましょう。
孫を養子にするということは、本来は親子関係である「子ども(孫の親)」と「孫」が、戸籍上は兄弟姉妹関係になるということです。一般家庭からすると、なかなか理解しにくい対策かもしれませんが、違法行為ではありません。むしろ、多くの富裕層が密かに行っている、比較的ポピュラーな相続税対策です。
自分の孫を養子にすると何が起こるのか?
「三代で財産がなくなる」という言葉があるように、日本は「代が変わる」ことに対する相続税が非常に重い国です。最高税率は55%ですので、富裕層は相続が発生するたびに資産の半分以上を納税する必要があります。
逆に言えば、代々資産を守る有効な方法は、できる限り相続の回数を少なくすることです。そこで生み出されたのが、孫を養子にするというテクニックです。極端な話、孫を養子にして、子どもと孫を戸籍上の兄弟姉妹関係にしたうえで、財産の全額を孫に相続すれば、「子ども一代分(1回分)」の相続をスキップできます。
前述のように相続税の最高税率は55%ですから、1回分をスキップできるメリットは大きなものとなります。子どもの同意がないと揉める火種になりかねませんが、「一代飛ばし」をするようなファミリーは、家族全員が「何とか相続税負担を下げて、末代まで資産を残したい」と思っていることが大多数です。
2割加算ルールはあるが、それでも実行したほうが有利なことが多い
しかし、少しでも多く税金を徴収したい国税庁が、「一代飛ばし」の対策を怠るはずがありません。「一代飛ばし」による節税を防ぐため、孫が養子縁組によって相続人となった場合、通常の相続税に加えて2割が加算されることになっています。
ただ、資産規模の大きなファミリーの場合は、2割加算されても一代飛ばしたほうが有利であるケースが多いと言えます。特に、株式(自社株)や不動産など「今後も値上がりが期待できる資産」もしくは「配当や賃料などで定期的にキャッシュを生む資産」は、できるだけ代を飛ばして移転したほうが、一族全体の納税額を少なくできます。
「一代飛ばし」は比較的ポピュラーな相続税対策
ここまで、「一代飛ばし」という節税策を紹介してきました。前述のように、富裕層の間では比較的ポピュラーな相続税対策です。
養子縁組された孫は、母方の祖父母の養子になったとしても、戸籍を変更するだけで、元の名字で生活することが一般的です。父方の祖父母の養子になった場合は、名字変更の必要性すら生じません(戸籍変更の手続きは必要です)。戸籍は基本的に公開されていませんので、「一代飛ばし」を行っても、回りが気がつくことはほとんどないはずです。
そうでなくても、代々の資産家に生まれた人は、実家がいかにお金持ちであるかをあまり自慢や口外しない傾向にあります。実はあなたの隣にも、戸籍上は親と兄弟関係になっている人がいるのかもしれません。
文・菅野陽平(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
(2021年7月11日公開記事)
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