TikTokの上場は実現するのか──企業価値はトヨタの1.5倍?【IPO】

2021/12/24 12:45

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2020年、世界の主要国で唯一プラス成長だった中国は今、「IPOブーム」にあります。その最大の目玉が「TikTok」のバイトダンス(字節跳動)。中国メディアの中には、同社の企業価値(時価総額)を4000億ドルと推定している記事もあり、これが本当ならトヨタの1.5倍です。 実現すれば、世界最大規模のIPO(新規株式上場)

2020年、世界の主要国で唯一プラス成長だった中国は今、「IPOブーム」にあります。その最大の目玉が「TikTok」のバイトダンス(字節跳動)。中国メディアの中には、同社の企業価値(時価総額)を4000億ドルと推定している記事もあり、これが本当ならトヨタの1.5倍です。

実現すれば、世界最大規模のIPO(新規株式上場)となりそうです。上場する市場はどこなのか、中国政府はどうでるか。中国メディアでは観測記事が花盛りです。

TikTokが2020年ダウンロード数世界一になれた理由

TikTokの2020年の世界ダウンロード数は8億5000万件。ゲームを除けばナンバーワンです。

成功のカギは、15秒(現在は60秒)と短く、言語表現もなく、動画投稿のハードルを大きく下げたことでした。言語の壁がないということは、初めから国際性があったということです。

もともとTikTokには先行者がいました。リップシンク(クチパク)の15秒ミュージックビデオを開発したMusical.lyです。2017年11月、そのMusical.lyを買収しTiktokに統合したことが大成功につながり、翌2018年、一気に世界へ飛躍しました。

創業者はまだ38歳

TikTokの運営会社・バイトダンスは2012年、北京で誕生しました。創業者は1983年生まれの張一鳴氏、まだ38歳の若さです。両親は事業で成功、恵まれた家庭でのびのび育ち、 “技術オタク”を自認する新世代の経営者です。

2005年、天津の南開大学ソフトウェア学部を卒業、すぐにオンライン不動産など、複数のIT企業の創業に関わります。バイトダンスはそれらの1社で、当初の事業は、国内向けニュースアプリ「今日頭条」でした。

そして映像コンテンツへの進出で世界進出への道を切り開きました。一方国内では、ニュースアプリ、ライブコマース、オフィスツール、オンライン教育、ゲームなど幅広く展開し、わずか設立9年で売上2366億元(約4兆円)従業員は11万人に達しています。

IPOは政府が決める?……香港市場が最有力

そのバイトダンスの上場は以前から噂されていました。2018年11月時点で同社の評価総額はUber以上といわれ、2020年にも上場すると盛んに報じられていました。「4~6月期に香港証券取引所に上場する」「上場時点の時価総額は3000億ドル近くになる」などといわれていました。

しかし今年4月には、自社運営のアプリ「今日頭条」で上場の予定がないことを表明しています。

その慎重姿勢の背景には、米中対立を踏まえた中国政府の意向があるとされています。昨年には、米国のトランプ大統領(当時)にダウンロード禁止、米国事業の売却を迫られました。セキュリティ上の懸念が理由でしたが、最近は中国側もデータ流出の危険に、しばしば言及しています。

たとえば6月末には、配車アプリのDiDi(ソフトバンク、トヨタ出資)がニューヨーク市場へ上場しましたが、その数日後の7月2日に、中国政府が「国家安全保障、公共利益のため」と称しDiDiへの査察を発表、新規ユーザー登録を禁止しました。これを受けて株価は5%以上急落しています。

国家安全保障とは、まず米国への個人データ流出懸念と考えられますが、膨大なデータを持つIT企業の海外上場そのものを問題にしているようです。

中国政府は7月に入って、海外で上場する中国企業に対する規制を強化する方針を発表しています。新華社が伝えました。主に米国市場に上場するIT系スタートアップ企業が主な狙いとみられます。

中国のIT大手は、ほとんどが米国市場か香港市場を目指します。特に米国市場は、流動性が高く世界的な評価を得られやすいため大人気です。2021年は、米中対立などどこ吹く風、史上最高となる60社以上のIPOが計画されています。この風潮に歯止めをかけたいのでしょう。

TikTok、DiDiのケースを見るにつけ、中国政府は、自国のIT企業がお気に召さないようです。各種データは、まず中国政府の統治に利用されるべきであり、海外株主に、先に開示すべきものではない。IT企業の中国(政府)離れは断固阻止する。そんな決意が感じられます。TikTokのIPOは本当に実現できるのか。アント・グループ(昨年11月政府指示により突然IPO中止)以上に政治に翻弄されそうな予感です。

文・高野悠介(中国事情に詳しいフリーライター)
編集・濱田 優(dメニューマネー編集長)

(2021年7月12日公開記事)

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