連載「これであなたも金融通 経済ニュースの読み方入門」第7回
今や世界中のニュースをほぼリアルタイムで読むことができますが、金融や経済のニュースは難しい言葉も多く、「結局このニュースを資産運用にどう活かせば良いのか分からない……」という人も多いでしょう。本連載では資産運用初心者向けに、経済ニュースをどのように読み解いていけば良いか解説します。
21マスのうえで、4人のプレイヤーが動いている金融市場
この連載を通じて「金融市場」と呼ばれるものの正体は、21マスのうえで、4人のプレイヤー(中央銀行、金融機関、機関投資家、個人投資家)によって行われるマネーの動きそのものと説明しています。21マスは以下の通りです。
米国 | 欧州 | 日本 | 中国 | 新興国 | |
---|---|---|---|---|---|
為替 | 1 | 5 | 9 | 13 | 17 |
債券 | 3 | 6 | 10 | 14 | 18 |
株式 | 3 | 7 | 11 | 15 | 19 |
不動産 | 4 | 8 | 12 | 16 | 20 |
商品 | 21 |
金融市場と聞くと、多くの人は為替市場や株式市場を思い浮かべるかもしれません。しかし、それらと同じくらい、場合によってもそれら以上に重要なのが債券市場です。今回は、そんな債券市場について見ていきましょう。
重要なのは「国債」の「10年債利回り」
債券市場と言っても、債券には国債、社債、ハイイールド債(ジャンク債)、仕組債、利付債、割引債、劣後債など様々な種類があります。なお、本来は発行体と形態を分けて考えるべきですが、ここでは便宜上合わせて列挙しています。
このなかで、資産運用初心者が見るべきものは「国債」の「長期金利」です。特に「10年債利回り」が重要です。10年国債利回りは「経済の体温計」とも呼ばれており、その動向は為替、株式、不動産、その他のあらゆるリスク資産価格に影響を与えます。
「リスクフリーレートに比べてどれくらい有利か」という考え方
10年債利回りの重要性を理解するうえで、覚えておきたい言葉(概念)が「リスクフリーレート」です。リスクフリーレートとは、無リスク(リスクフリー)に近い金融商品から得られる利回りのことで、一般的に預貯金や国債などの利回りを指します。平たく言うと、何もリスクを取らずして得られる利回りです。
ある一定レベル以上の投資家になると、世界のあらゆる金融商品の投資判断をするときに「リスクフリーレートに比べてどれくらい有利か」という考え方をします。つまり、10年債利回りを共通のモノサシとしているわけです。
国債は各国が発行していますので、米国にも日本にもドイツにも、別々の10年債利回りが存在します。これだと国境を跨いだ比較がしにくいので、世界共通のモノサシとして「米国の10年債利回り」を使うことが一般です。なぜ米国が選ばれるのかというと、これまでの連載で解説してきた通り、米国が金融市場の中心地であるためです。
実例1 日経新聞電子版
実例を交えて解説していきましょう。次の記事は先日(2021年7月8日 20:13)、日経新聞電子版に実際に掲載されたニュースです。
世界中で不動産投資信託(REIT)の価格が上昇しているという記事です。その理由としては、タイトルにもあるように、米国10年債利回りが低下したことを挙げています。
REITは高配当が魅力の利回り商品ですので、米国10年債利回りが上昇すると売られ、米国10年国債利回りが下落すると買われる傾向があります。米国10年債利回りはリスクフリーですので、それが高利回りであれば、わざわざ元本割れリスクを抱えてまでREITを購入する必要はないためです。
実例2 Bloomberg
もうひとつ実例を見てみましょう。下記は先日、Bloomberg(世界的な金融情報ベンダー)に実際に掲載されたニュースです。
ドル・円は下落、リスク回避の株安・米金利低下で-110円台前半
米ドル・日本円の為替レートが円高に触れたという記事です。そのひとつの理由として、タイトルにもあるように、米国10年債利回りが低下したことを挙げています。米国10年債利回りが低下するということは、米ドル保有中にもらえる利息が減るということですので、米ドルを手放した人が多かったというわけです。
今後は米国10年債利回りの動向に注目しよう
「世界共通の投資判断のモノサシ」とも言える米国10年債利回りですが、通常の生活をしていると、為替動向や株価動向に比べて、目にする頻度が少ないはずです。一般的な報道番組ですと、日経平均株価やドル円レートは報道されますが、米国10年債利回りまで触れることはほとんどありません。
しかし、リスクフリーレートである米国10年債利回りが、すべての投資判断の始まりと言っても過言ではありません。今後は、米国10年債利回りの動向に注目してみて下さい。
文・菅野陽平(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
(2021年7月14日公開記事)
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