トヨタ自動車 <7203> やソフトバンク <9984> よりも知名度は圧倒的に低いが、年収ではまったく負けていない企業がある。キーエンス <6861> だ。
計測機器や情報機器を扱う大阪の企業で、電機業界においても高年収の企業として知られる。では実際、従業員はいくらぐらい給料をもらっているか。
キーエンスはどんな企業?業績は?
キーエンスは、現名誉会長の滝崎武光氏が1972年に個人創業した「リード電機」が前身だ。1974年に株式会社化し、1986年に「キーエンス」に社名を変更した。東京証券取引所の1部に上場しており、世界46カ国230拠点で事業を展開している。
売上高をこの10年で大きく伸ばしており、2011年3月期に1,848億円だった売上高は2021年3月期には5,381億円まで膨らんでいる。約2.9倍だ。そして、純利益の伸びは売上高の伸びを上回る。同期間で553億円から1,973億円まで伸ばし、約3.5倍となっている。
平均年収は2,000万円を下回るも、コロナ収束ですぐ回復?
世界展開も成功させ、業績も好調なキーエンス。ではそんなキーエンスの平均年収の直近10年間の推移を追っていこう。
キーエンスの平均年収のこの10年の推移
年 | 平均年収 | 従業員数 | 平均年齢 | 平均勤続年数 |
---|---|---|---|---|
2021年 | 17,517,949円 | 2,607人 | 35.8歳 | 12.2年 |
2020年 | 18,392,309円 | 2,511人 | 35.6歳 | 12.0年 |
2019年 | 21,106,666円 | 2,388人 | 35.8歳 | 12.1年 |
2018年 | 20,885,270円 | 2,253人 | 35.9歳 | 12.2年 |
2017年 | 18,617,851円 | 2,121人 | 36.1歳 | 12.4年 |
2016年 | 17,770,822円 | 2,013人 | 36.1歳 | 12.4年 |
2015年 | 16,485,728円 | 1,988人 | 35.6歳 | 11.8年 |
2014年 | 14,401,001円 | 2,038人 | 34.8歳 | 11.1年 |
2013年 | 13,219,419円 | 2,029人 | 34.3歳 | 10.6年 |
2012年 | 13,221,200円 | 1,883人 | 34.4歳 | 10.7年 |
こうしてみると、2012年は約1,322万円だった平均年収は2021年には約1,751万円まで伸びている。実はピーク時の2018〜19年には2,000万円を超えていたのだが、コロナ禍の影響で企業が設備投資を渋った結果として2期連続の減益となり、従業員の平均年収も落ち込んでいる。
つまり逆の見方をすれば、コロナ禍が収束して企業の設備投資が活発化すれば、自然とキーエンスの従業員の平均年収も2,000万円台に戻っていくことが考えられる。
ちなみに、時価総額で国内の首位のトヨタ自動車<7203>の2021年の平均年収は約858万円、ソフトバンク<9434>の平均年収は約820万円だ。いかにキーエンスの平均年収が高いかがよく分かる。
圧倒的「営業力」で高年収実現、採用試験の倍率は50〜100倍?
最後にキーエンスがなぜここまで高額な給与を支払えるのか、触れておきたい。キーエンスの強みとしてよく言われているのが、「ファブレス(工場を持たないこと)」と「開発力」、そして「営業力」だ。
自社で工場を持っていないものの、顧客が求める商品をスピーディーに委託開発し、従業員の高い営業力でその商品を中小企業などに販売している。特に営業力は目を見張るものがあり、契約獲得のためのキーパーソンを見分け、営業プロセスも極限まで洗練されている。
年収が高い分、従業員には非常に高いレベルの業務遂行能力が求められるが、高年収、そしてスキルアップできるという環境にも魅力を感じている新卒人材は多く、採用試験の倍率は50〜100倍とも言われる。今後も人材市場でこうした状況が続くか、注目したいところだ。
文・岡本一道(経済ジャーナリスト)
編集・濱田 優(dメニューマネー編集長)
(2021年7月15日公開記事)
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