連載「お金の心理学」第6回 未来の見え方は人によって違う
貯蓄や投資で着実に資産形成できる人もいれば、なかなかお金が貯まらない人もいます。何が明暗を分けてしまうのでしょうか?もしかしたら、未来の見え方の違いが影響しているかもしれません。資産形成の足かせとなる心理傾向を紹介するので、自分に当てはまるかチェックしてみてください。
「100万円問題」で分かる、あなたにとっての現在と未来の価値
価値の見え方というのは、実は時間によって変わります。次のような選択肢があったら、あなたはどちらを選びますか?
1 今すぐ100万円もらえる。
2 1年後に110万円もらえる。
2つ目の選択肢では、何もしなくても受け取れるお金が10%も増えます。
メガバンクの普通預金金利は0.001%なので、100万円を1年預けても、たった10円しか増えません。2021年6月時点の東証一部の有配会社平均利回りは1.86%なので、100万円で株式投資をしても、受け取れる配当金は平均1万8,600円です。
そう考えると、1年待つだけで10万円増えるというのは、かなりお得だと分かります。それでも、1つ目の選択肢を選ぶ人もいます。
なぜ、1つ目の選択肢を選ぶのでしょうか?
実は、人によって「将来の価値」の見え方が異なるのです。
“目先の得”に縛られる人、“将来の得”を見極められる人
人間は「今」を大切にします。そのため、「今の価値」と「将来の価値」を比べる時に、時間の経過に応じて将来の価値を割り引いて考える傾向があります。
時間の経過に応じてどのくらい価値を割り引くかという割合を、「時間割引率」といいます。
「時間割引率」は人によって違います。時間割引率が高い人ほど、“将来の価値”を多く割り引いてしまい、今を優先してしまいがちな傾向があります。
時間割引率が高い人は、将来の110万円を割り引いた結果、今の100万円の価値を下回り、1つ目の選択肢を選んだのです。
逆に、時間割引率の低い人は、将来の110万円を割り引いても今の100万円の価値を下回ることはないため、2つ目の選択肢を選んだのです。
「今、得だから」と目先の100万円を優先するのか。将来のリターンを見据えて、10万円増えるまでじっと待つことができるのか。「100万円問題」は、自分自身の時間割引率の傾向を知る手がかりになります。
“将来の得”を選べる人は投資に向いているかも?
目先の利益を優先するのは、一概に悪いこととは限りません。「1年の間に何が起きるか分からない」と考えて現在を優先するのは、一つの価値観です。
しかし投資においては、先を見据えて合理的な選択肢を選んだ方が、効果が得られやすいといえます。
資産形成に悩んでいて、1つ目の選択肢を選んでしまったという人は、まずは「将来の価値を大きく割り引く傾向がある」という自分の特性を把握しましょう。そして一歩立ち止まって、将来の得について考え直してみるクセをつけると、貯蓄や投資がうまくいく可能性があります。
迷いなく2つ目の選択肢を選べた人は、投資の素質があるかもしれません。「将来の価値を大きく割り引くことなく、現在の価値と比較検討して合理的な判断ができる」という自分の特性を知り、資産形成に活かしていきましょう。
文・木崎 涼(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
(2021年7月17日公開記事)
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