毎年注目されるのがボーナスの「使い道」だが、今年も各種調査・アンケートで「預貯金」という回答が最も多いようだ。
実はこうした状況が「日本の常識、先進国の非常識」となりつつある。欧米では投資に多くのお金が充てられているからだ。
■ある調査では2割の人がボーナスの「9〜10割」を貯金する
あるニュースサイトが会員を対象に行った調査では、2021年の夏のボーナスの使い道(複数回答)で最多だったのが「預貯金」で48.8%だった。「金融商品の購入(投資・資産運用など)」の回答は13.5%で、全体では7位だった(マイナビ調べ)。
また別のサイトでは全国500人を対象に調査を実施したところ、首位は「貯金」で251票だった。ちなみに貯金と回答した人の22.8%が、ボーナス額の91〜100%を貯金すると回答している(All About調べ)。
2021年7月現在ではまだ新型コロナウイルスの感染拡大が収束していないこともあり、将来の生活不安から貯金を増やしたいという人も多いだろう。しかし、日本人の貯金好きはいまに始まったことではなく、これまでも欧米に比べて預貯金率が非常に高かった。
■投資割合が欧米に比べて低い日本の現状
金融庁が2018年1月に公表した「家計の安定的な資産形成について」という資料では、アメリカとイギリス、日本の3ヵ国を例に挙げ、資産の構成比を紹介している。その結果、日本の株式・投資信託への投資割合は3ヵ国の中で最も低くなっている。
●日米英の投資割合の比較
国名 | 投資割合 |
---|---|
アメリカ | 46.2% |
イギリス | 37.5% |
日本 | 18.6% |
(出典:金融庁。投資割合は保険・年金などによる有価証券などの間接保有も含む)
投資にはリスクがつきもので、場合によっては元本割れの可能性もある。しかし、中長期的にみれば世界の株式市場は緩やかな右肩上がりの状況が続いているほか、債券といった比較的リスクが低い金融商品もある。
そして適切にリスクを回避しながら上手に資産運用をすれば、預貯金で得られる利息よりはるかに大きなリターンを得られる。だが、それにも関わらず日本人はあまり投資にお金をまわさないのだ。
このままでは老後の生活資金に「黄信号」
かつての日本のバブル期のように、給料が右肩上がりで高金利の状況が続いていれば、資産運用の必要性はいまより低いとも言える。
しかし今や、給料が伸び悩み、金利もゼロなどとても低く、かつ「人生100年時代」が迫りつつある現在においては、資産運用の必要性は非常に高くなっている。
こうした状況の中、日本政府も「貯蓄から投資へ」をスローガンとして打ち出し、投資の運用益に対して課税をしない「NISA」(ニーサ)という制度をスタートした。
NISAの利用者は年々増えてはいるが、それでもまだボーナスの使い道で「貯金」が圧倒的1位だ。
このままではいまの現役世代の老後の生活資金に「黄信号」が灯る。いや既に灯っているかもしれない。夏のボーナスの使い道から見えてくるのは日本の残念さではないだろうか。
文・岡本一道(経済ジャーナリスト)
編集・dメニューマネー編集部
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