24億円で取得したテスラ (TSLA) の株式を約4,000億円で売却したパナソニック <6752> 。ネットでは「(ソフトバンクの)孫さんも驚きの投資上手」などと話題になったが、一番ざわついたのは同社の社員かも。巨額の売却益が給料アップにつながるかもしれないからだ。
24億円のテスラ株を4,000億円で売却
テスラはアメリカのEV(電気自動車)メーカーで、パナソニックは2010年にテスラの発行済み株式の1.5%を約24億円で取得していた。そしてその株式を、2020年4月から2021年3月の間に約4,000億円で売却したという。
売却益に課税される税金などを考慮しなければいけないが、それでも多額の利益を得たことには変わりがない。
ちなみにパナソニックの1年間の純利益は、2016年3月期から2020年3月期にかけては1,000億〜2,000億円台で推移しており、テスラ株の売却益がいかに同社にとって巨額か分かっていただけるかと思う。
巨額の売却益は給料に反映されたのか
では、こうしたテスラ株の売却を経て、パナソニックの従業員の平均年収は上がっていくだろうか。もしくはすでに上がっているのだろうか。
2020年4月から2021年3月のどの時点でテスラの株式が売却されたかは不明だが、パナソニックの有価証券報告書からここ最近の平均年収の推移は以下のとおりだ。
会計年度(すべて3月) | 平均年収 | 従業員数 |
---|---|---|
2021年 | 7,439,769円 | 59,006人 |
2020年 | 7,546,379円 | 6万455人 |
2019年 | 7,744,759円 | 6万2,031人 |
2018年 | 7,680,506円 | 6万1,311人 |
2017年 | 7,814,911円 | 5万7,484人 |
パナソニックの平均年収は右肩下がりの状況が続いており、直近1年で劇的に給料がアップしたということもない。つまり現時点では、テスラ株の巨額の売却益が従業員の給料に還元されてはいないようだ。
それでは今後、巨額の売却益が従業員の給料に還元される可能性はあるのか。
恐らく今後も劇的アップは期待薄だが……
客観的に考えてみると、残念ながら従業員の給与が劇的に上がるということは、恐らくないだろう。パナソニックは売却益について、「成長投資資金に充てることを検討する」とコメントしているからだ。
しかも2021年3月期、新型コロナウイルスの感染拡大はパナソニックの業績にもダメージを与え、最終損益は前期の2,257億円から1,650億円へと607億円も減った。こうした状況では、変異株の脅威などでコロナ禍の収束時期も依然見通せない中、従業員の給料は上げにくいだろう。
ただし、その可能性は100%ではない。先ほどの予想がはずれ、今年の冬のボーナスなどで平均年収がぐっと上がる可能性もなくはない。いずれにしても、次に公表される有価証券報告書をみれば、結果が分かる。さて、どうなるのだろうか。
文・岡本一道(経済ジャーナリスト)
編集・dメニューマネー編集部
(2021年7月29日公開記事)
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