東証1部がなくなる……東証再編の理由とプライムに入りたい企業の思惑

2021/08/02 07:00

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日本の株式投資の中心地「東京証券取引所」が2022年4月から再編される予定で、上場企業の動きも活発になっています。なぜ東証は再編されるのでしょうか。再編されると企業にはどういう影響があるのでしょうか。 「1部」がなくなる? 東証が再編される理由 現在、東証には市場第1部、市場第2部、マザーズ、JASDAQという4つの市

日本の株式投資の中心地「東京証券取引所」が2022年4月から再編される予定で、上場企業の動きも活発になっています。なぜ東証は再編されるのでしょうか。再編されると企業にはどういう影響があるのでしょうか。

「1部」がなくなる? 東証が再編される理由

現在、東証には市場第1部、市場第2部、マザーズ、JASDAQという4つの市場区分があります。2022年4月4日に、現在の市場区分を「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3つの市場に再編する予定です。

コンセプトがあいまい

現在は市場第2部、マザーズ、JASDAQの位置づけが重複しているなど、市場区分のコンセプトはややあいまいであり、多くの投資者にとって利便性が高いとは言えない状況でした。

上場ゴールを招きやすい

また、新規上場基準よりも上場廃止基準が大幅に低いことから、上場後に業績が低迷しても、めったなことでは上場廃止になりません。そのため、いわゆる「上場ゴール」を招きやすく、企業成長のインセンティブ(上場廃止や下位市場降格への危機感)が働きづらい状況でした。

直接上場より市場替えのほうが簡単とされた

さらに、市場第1部へ直接上場するよりも、一旦マザーズなどに上場して、市場第1部に市場替えするほうが簡単(条件が緩い)ことも問題視されていました。このようなことを総合的に勘案して、今回の決断に至ったようです。

多くの上場企業はプライム市場に入りたい?

新しい市場区分のコンセプトを平易に説明すると以下の通りです。定量的な基準も明示されており、基本的にはグロースよりスタンダード、スタンダードよりプライムのほうが、入るための基準は厳しくなっています。

プライム市場……日本を代表する企業が集まる市場
スタンダード市場……プライムに入るほどではないが、基本的なガバナンスが整った企業が集まる市場
グロース市場……高い成長を遂げる可能性があるベンチャー企業が集まる市場

3市場には、現在の市場第1部と市場第2部のような上下関係はないですが、そうはいっても多くの上場企業は「プライム市場に入りたい」と思っていることでしょう。

現在は「東証1部上場」という6文字が高い信用力を発揮しているように、2022年4月からは「プライム市場上場」という言葉が大きな意味を持つようになるためです。

「流通株式比率35%以上」を満たすための各社の動き

しかし、東証1部(市場第1部)に上場する2,191社のうち、2021年6月末時点でプライム市場の基準に該当しない企業は約3割の664社にのぼるそうです(日経新聞の報道による)。

つまり、このままでは約3割の東証1部企業がプライム入りできないということです。

特にネックとなっている条件のひとつが「流通株式比率35%以上」という基準です。そこでプライムに入りたい企業は、「流通株式比率35%以上」を満たすべく、様々な動きを見せています。

例えば、ZOZO <3092> は、流通株式比率を上昇させるため、創業者である前澤友作氏から株式を取得し、新株予約権を発行すると発表しました。

同様の動きは、株式持ち合いの慣習が残っている伝統的な企業でも見られます。トヨタ紡織 <3116> は、トヨタグループ創始者・豊田佐吉が設立した歴史ある企業で、トヨタ自動車 <7203> が大株主になっていました。大株主の所有分は流通株式にカウントされないので、トヨタ自動車が持つトヨタ紡織株を売却してもらい、流通株式比率の向上を図りました。

流通株式比率の上昇には、自己株式の償却も有効です。そこでアスクル <2678>は、自己株式の償却することで流通株式比率を上昇させる施策を公表しています。

保有者や購入予定者はその企業の動きを確認しよう

プライム入りするための条件は「流通株式比率35%以上」だけではありません。プライム入りするためには株主数、流通株式数、流通株式時価総額、売買代金、ガバナンス・コード全原則の適用など様々な条件をクリアする必要があります。

「このままではプライム入りできないかもしれない」という焦りが多くの上場企業を動かしています。個人投資家なら、株式を保有している企業がどのような動きをしているか確認してみると良いでしょう。

これからは個別株式を購入するときも、その企業がプライムに入れそうなのか、入るためにどのような動きをしているチェックしましょう。2022年4月に向けて、今後一層このような動きが活発になるはずです。

文・菅野陽平(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部

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