新しい年が始まるにあたって、今年1年、どう投資すればいいのか、何に注目すればいいのか悩んでいる初心者は少なくないだろう。2024年は新NISAが始まるほか、衆議院の解散総選挙が取り沙汰されるなど、相場に大きな影響を与える出来事がいろいろと予想・予定されている。そんな2024年、投資家として順調なスタートを切るために、一年の計があるという元旦に、投資の戦略のヒントをお届けしたい。
今回、マネックス証券のチーフ・ストラテジスト、広木隆氏のインタビュー取材を、同証券が運営する投資情報とお金に役立つメディア「マネクリ」と合同で行なった。1月1日と2日の2回にわたって、コラボ企画記事としてお届けする。(インタビュー/構成・濱田 優=dメニューマネー編集長)
※ 取材は12月上旬に行われました。
プロフィール
広木隆(ひろき・たかし)マネックス証券 チーフ・ストラテジスト
上智大学外国語学部卒。神戸大学大学院・経済学研究科博士後期課程修了。博士(経済学)。社会構想大学院大学教授。国内銀行系投資顧問、外資系運用会社、ヘッジファンドなど様々な運用機関でファンドマネージャー等を歴任。2010年より現職。テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」、BSテレビ東京「日経プラス9」等のレギュラーコメンテーターを務めるなどメディアへの出演も多数。
2024年、株価はどうなる?上がる?
──2024年がどんな1年になりそうか、率直に相場の展望からうかがえますか。
2024年は辰(たつ)年ですが、相場の格言では「辰巳天井」(たつみてんじょう)といいます。これは辰年と巳年には、相場は高値をつけるということです。
なお2023年は卯(うさぎ)年ですが、卯年の格言は「うさぎ跳ねる」といい、実際、株価はすごく上がっていて、(年初から取材日の)今までに3割ぐらい上がっています。
2024年も辰年で龍のように上がり、(日経平均は)史上最高値を更新するでしょう。
──2024年の相場予想を取材で問われることが多いと思います。たとえば日経平均がいくらになるか。その質問にはどうお答えになりますか?
4万2000円ですね。これには当然根拠もあるのですが、詳しくは細かな試算になるので、マネクリのインタビューで解説したいと思いますが(マネクリに飛びます)、簡単にいうと、企業業績を表すEPS(Earnings Per Share、1株あたり純利益)やPER(Price Earnings Ratio、株価収益率)といった指標の今期末の着地の数字に、来期の予想の倍率をかけあわせると分かります。日経平均は過去最高値を更新し、4万2000円に到達します。
──日本経済をけん引する、株価を引き上げる好調なセクターは具体的には何だと思われますか?
まずけん引役を果たすのは半導体関連でしょう。あとはインバウンド関連も盛り上がると思います。観光や消費、空運や陸運などの移動関連は伸びるはずです。外国人の日本旅行への需要が今以上に高まると考えられるからです。
2024年のイベント「解散総選挙」以上に注意しておきたいこと
──2024年の予定で気になるのは、たとえば衆議院の解散総選挙が行われるかどうかですが、カレンダー上で予定されていること、また予想されている出来事で気にしておきたいことは何ですか?
たしかに衆議院の解散総選挙は気になるところですが、衆議院は2025(令和7)年までまだ任期が残っていて、引っ張ろうと思えば引っ張れるので、いつになるか分かりません。しかし、自民党総裁は任期が9月までなので、総裁選はそのころに行われるでしょう。これがどうなるかは一つのヤマではあると思います。
ただ、政治・選挙関連の分野で圧倒的に注目しているのは、なんといってもアメリカの大統領選です(注:2024年11月5日が投票日になる見込み)。
──アメリカ経済は日本の経済、株価にも影響すると思うので、チェックしておきたいという投資家は多いと思います。ただ、ニュースや指標がたくさんあって、初心者がそのすべてを意識するのは難しいです。少なくともこれだけみておけばいいというものを教えてください。
初心者の投資家がアメリカ経済の現状を知るために、何かこれだけ見ておけばいいものを挙げるとすれば、アメリカの労働市場です。その様子が分かるのは、雇用統計です。
本来、アメリカ経済をみるときに重要なのは、金融政策と景気です。ただ景気がどうなるかは分かりづらい。経済や景気の状況は、雇用がどうなっているのかである程度分かる。金融政策は、雇用の状況や失業率などを見ながら行われていて、金利を引き締めたり、緩和したり、利下げしたりということをしているわけです。
アメリカの経済を見る上では、労働市場の現状を把握することが非常に重要で、雇用統計が一番注目度の高い指標です。雇用統計は失業率など十数項目が毎月第一金曜に発表されています。
雇用統計がどれほど重要な指標なのか
──日本では景気の状況について、景気動向指数が毎月発表されていますね。
景気には山谷(やまたに)というものがあって、拡大したり下降したりしています。それを判断するのは、日本では内閣府ですが、アメリカは全米経済研究所が判定しています。
NBER、National Bureau of Economic Researchという組織ですが、そのNBERのホームページの背景画像に一つチャートがあります。これは年表になっていて、景気が悪い後退期がグレーに塗られています。その上に一本の折れ線グラフが重ねられているのですが、それは失業率を示しています。
景気判断をする全米経済研究所がサイトのトップページにそのグラフを載せているということは、言い換えると、「何か一つ重要な指標を」と問われたら「失業率」と答えるということだろうと思います。
単純な話、職があれば人々は安心してお金を使えて景気は良くなるし、反対に、労働者が街にあふれかえるようだと、どう考えても景気は悪くなる。失業率は、景気を判断する上で、分かりやすく重要な指標です。
ただ、金融政策はこうした労働・雇用の状況を見ながら行われるものなのですが、ここ数年は、新型コロナウイルスと、さまざまな制約が引き起こすことになったインフレなどがあり、イレギュラーな状況にありました。金融政策もちょっとおかしくなっていて、リアルな景気とのミスマッチがおき、なかなか先が読みづらかった。
しかし、基本的には、労働市場とそれをもとにした金融政策がどう行われるかを見ることが、アメリカの経済をとらえる上で基本の姿勢と言えます。
──なるほど。2024年の日本株は上昇が期待でき、少なくともこれだけは注目しておきたいニュースは、米国の大統領選挙と自民党の総裁選の行方ということですね。次に、いよいよ始まる新NISAにどう投資すればいいかをうかがいたいと思います。
後編につづく(1月2日公開)
構成・濱田 優(dメニューマネー編集長)
写真/編集・dメニューマネー編集部
【あわせて読みたい(マネクリ取材記事)】
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