老後の生活の支えとなる年金だが、毎月支払っている国民年金は定年後にいくらもらえるのだろうか。また、年金は手続きをしなくても、65歳になれば勝手に口座に振り込まれると思っている人もいるかもしれない。しかし、それは大きな間違いだ。国民年金で勘違いしがちなこととして、ほかにはどのようなものがあるのだろうか?
結局、国民年金はいくら払って、いくらもらえるのか?
私たちは支払う年金保険料に対し、老後にどれくらいの年金を受け取れるのだろうか。原則20歳以上60歳未満の全員が加入する「国民年金」について、大まかに計算してみた。
国民年金に対応する老後の年金は「老齢基礎年金」という。2022年度における満額は77万7,800円(年額)だが、加入期間が短いと減額され、満額受け取ることができない。
20歳から60歳までの40年間、保険料の免除等を受けず欠かさずに保険料を支払った場合に年間77万7,800円、月額で6万4,816円を受け取れる。
【老齢基礎年金の計算式(年額 2022年度)】
・77万7,800円×保険料納付月数÷480ヵ月
※保険料の免除等を受けていない場合
※65歳から受け取る場合
第1号被保険者として20歳から60歳までの40年間(480ヵ月)加入した場合、累計支払い保険料は796万3,200円(1万6,590円×480ヵ月)となる。
これに対する老齢基礎年金が年間77万7,800円なので、老齢基礎年金を10年とちょっとの間受け取ると、支払った保険料より受け取る年金の方が大きくなる。
老後の年金は原則65歳から受給できるため、おおむね75歳まで生きるなら払い損にならない。
【老齢基礎年金の累計受給額】
ちなみに、日本人の平均寿命は男性で81.47歳、女性で87.57歳となる。国民年金に加入する人の多くは、支払った保険料より受け取る年金の方が大きくなるといえるだろう。
【日本人の平均寿命(2021年)】
・男性:81.47歳
・女性:87.57歳
年金でよくある誤解
年金についてよく理解しないまま老後を迎えると、年金をもらい始める時期が希望より遅くなってしまったり、将来もらえる年金を増やせなかったりする。年金でよくある誤解には、次のようなものがある。
国民年金保険料の未納分は後からはどうしようもない
国民年金保険料が未納となっている分は、後からどうすることもできないと誤解している人がいる。
保険料が未納になる例として、学生のときに「学生納付特例制度」を使って保険料の納付を猶予してもらうケースが挙げられる。
実際はこうした制度を使って未納となっても、過去10年までさかのぼって未納分を後から納められる。これを「追納」という。
老齢基礎年金の満額は年間79万5,000円(令和5年度時点)だが、保険料の未納があるともらえる額が満額より少なくなるので、年金を少しでも増やしたいなら追納したほうがよいだろう。
また、追納期限が過ぎてしまったら、「任意加入」という方法を使う手もある。
任意加入とは、年金を満額もらえるだけの保険料を60歳時点で納めていないときに限り、60歳から65歳までの間、国民年金に入って保険料を納められる制度だ。
60歳を過ぎて働いてももらえる厚生年金は増えない
60歳を過ぎて再雇用やアルバイトなどで働いても、もらえる厚生年金は増えないと考える人がいるが、これも間違いだ。
厚生年金は、過去の加入期間にかかわらず、60歳以上の人も70歳まで入れる。
定年退職してしまうと厚生年金に入るのは難しいと考える人もいるが、再雇用やアルバイトであっても「週の所定労働時間が20時間以上」「賃金の月額が8万8,000円以上」といった条件を満たせば入れる。
将来もらえる厚生年金を増やしたい人は、60歳を超えても働けるうちは働いて、保険料を納めるのがよいかもしれない。
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年金でよくある3つの誤解 「手続きしなくても支給が始まる」ほか
文/編集・dメニューマネー編集部