日本マクドナルドが読売新聞社との連携を発表した。同社は日本マクドナルドホールディングス <2702> の子会社。連携の内容は、読売新聞の販売店の配達スタッフがマクドナルドのデリバリーサービスを担うというものだ。
なぜマックが新聞社と連携するのか。新聞の部数減は深刻で、新聞社だけではなく新聞販売店も苦境に陥っていることが背景にある。
若者の新聞離れもあり、部数増はもはや見込めない中、マクドナルドが新聞販売店の救世主になるかもしれない──。
読売新聞の販売店は全国に6700ヵ所
発表によれば、まずは1都1府7県にある約70店舗のマクドナルドで取り組みを始め、最終的には全国の店舗に拡大していくという。読売新聞の販売店は全国に6700ヵ所あるため、全国でこの取り組みを広げることが可能なわけだ。
1回の配達で販売所にどれくらいの売り上げになるのかは明らかにされていないが、部数減による売上減を少なからず補てんしてくれるはずだ。
しかも、新聞配達で忙しい時間とマクドナルドのデリバリーで忙しい時間が重なりにくいことも大きい。販売所が最も忙しいのは朝刊配達の早朝だが、それ以外の時間帯は比較的業務に余裕がある。
マクドナルド側にもメリットがある
ここで「マクドナルドが配達を委託するならわざわざ新聞販売店ではなくてもいいのでは?」との疑問も浮かんでくる。いまや日本にもギグワーカー(単発の仕事を請け負う人)として働く人は日本国内にも一定数いるからだ。
しかしその見方は半分正解だが、半分は誤りだ。マクドナルドが読売新聞の販売店に配達を委託するメリットは確実にある。
ギグワーカーとして働く人が増えているものの、デリバリーアプリの台頭でギグワーカーの奪い合いが起きている。そんな中、読売新聞の販売店と連携すれば、配達の人手を安定的に確保できる。
また、新聞の配達員はすでに配達スキルを有している。配達エリア内のことを熟知しているし、さらにはいかに迅速に配達するかだけではなく、顧客とコミュニケーションもとっている。
20年で6000店も減った新聞販売店 デリバリーアプリとの連携も?
新聞の購読部数は年々減っている。日本新聞協会の調べでは、新聞の購読部数はピークの1997年は5,000万部を超えていたが、2020年10年時点ですでに3,500万部まで減っている。しかもこの3年での減少部数は700万部で、減少スピードが明らかに加速している。
当然、新聞の販売店の危機感は相当なものだ。日本新聞協会によれば、2001年に全国に2万1000店あった新聞販売店は2020年には1万4000店ほどまでに減っている。従業員数も同じ期間で464,827人から261,247人に激減している。
こうした中、新聞社がデジタル版にさらに力を入れ始めれば、状況はさらに深刻化する。そんな中で、マクドナルドのデリバリー受託という活路が見えてきたわけだ。
デリバリーのニーズがあるのは、マクドナルドだけではない。ほかの大手チェーンとも連携すれば、販売店の売上はさらに上がっていくかもしれない。デリバリーアプリとの連携も場合によってはあり得るはずだ。
新聞販売店の生き残りをかけた取り組みの行方に、引き続き注目だ。
文・岡本一道(経済ジャーナリスト)
編集・濱田 優(dメニューマネー編集長)
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