住民税は「6月開始・5月終了」の税金です。具体的には「前年の1月から12月の所得」を元に計算されます。したがって2021年6月は、2021年度住民税の徴収が開始する月であり、その金額は2020年1月〜12月の所得を元に計算されます。
そんな住民税ですが、税制改正の関係で、“2021年6月分より増税になってしまう人がいる”ことをご存じでしょうか。サラリーマン(給与所得者)は毎月のお給料から源泉徴収されているので、住民税をあまり気にしたことがないかもしれません。今回をきっかけに住民税について学んでいきましょう。
住民税とは?
住民税(個人住民税)は、住んでいる都道府県や区市町村が行う行政サービスに必要な経費をまかなうために、その地域の住民に広く分担してもらう税金です。
個人の住民税には、定額で課税される均等割、預貯金の利子等に課税される利子割、上場株式の配当などに課税される配当割、株式等の譲渡益に課税される株式等譲渡所得割、そして、前年の所得金額に応じて課税される所得割があります。
均等割と所得割は、1月1日時点の住所がある地域で徴収されます。今回は「所得割」について解説します。
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2021年6月からの住民税負担が増える人は?
所得割の税率は原則として10%です。前年の所得金額に応じて課税されるので、前年の所得が高ければ高いほど、税負担は重くなります。
2020年の所得が、2019年の所得より大幅に増えていれば、2021年6月の住民税(=2020年の所得により計算される)が2021年5月の住民税(=2019年の所得により計算される)より増えるのは理解できるでしょう。
しかし、税制改正の関係にて、2020年の所得と2019年の所得が変わらなくても、2021年6月からの住民税負担が増える場合があります。具体的には、以下のような人が挙げられます。
・給与所得850万円超のサラリーマン(給与所得者)
・所得2,400万円超の高所得者
なぜこのような人は増税になってしまうのでしょうか。なお、この2つは似ているように見えますが、同一ではありません。給与所得以外の所得が2,400万円超の人もいるためです(ごく少数ですが……)。
給与所得控除や基礎控除が縮小された
増税となる理由は、平成30年度税制改正にて、給与所得控除が減額されたり、高所得者の基礎控除が廃止されたりしたためです。これらは、2020年の所得税から適用されました。つまり、2021年6月からの住民税に適用されるということです。
詳細を見ていきましょう。まず、給与所得控除が一律10万円引き下げられました。控除が減ったということは、課税対象額が増えるため、実質的な増税です。ただし、所得2,400万円以下の人は、代わりに基礎控除が10万円引き上げられた(38万円→48万円)ので、この時点ではプラスマイナスゼロで、増税ではありません。
言い換えると、所得2,400万円超の人は実質的な増税です。所得2,400万円超〜2,500万円以下は段階的に基礎控除が縮小され、2,500万円超は、これまで38万円あった基礎控除がゼロになってしまいます。高所得者であればあるほど税負担が増すことになります。
加えて、給与所得控除の上限額が220万円から195万円に引き下げられました。また、上限額が適用される給与水準が、以前の給与所得1,000万円超から850万円超に引き下げられました。つまり、給与所得850万円超から徐々に税負担が増えることになります。
2021年6月の「給与明細」は住民税を含めて確認しよう
2019年と2020年の所得が変わらなかったとしても、控除が減って課税対象額が増える「給与所得850万円超のサラリーマン」や「所得2,400万円超の高所得者」は、2021年6月からの住民税が原則として増税となります。
平成30年度税制改正は、高所得者を狙い撃ちにした税制改正でした。もともと日本は少子高齢化による社会福祉費の増大で、個人増税トレンドは不可避であり、今後も高所得者・資産保有者を中心とした増税は続くことが予想されます。
今回は増税とならなかった人も、税金の改正やトレンドは把握しておくと、自分の資産管理の大きな助けとなるはずです。
ぜひ2021年6月の給与明細は、住民税を含めてじっくりと確認し、自分がどれくらい税金を払っているのかを把握してみましょう。
執筆・菅野陽平(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
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