預金通帳をなくすと、「残高の2割」を報労金として求められる可能性があることを知っていますか?さらに、お金に換えられない価値が預金通帳にはあります。「通帳をなくしてもお金を引き出されないから別にいい」は間違いです。
お礼は「気持ち」ではなく拾った人の「権利」
預金通帳を拾った人には、お礼を受け取る権利が生じます。
額について法律では、「価格の100分の5以上100分の20以下に相当する額の報労金」を支払わなければならないと決められています(遺失物法第28条第1項)。
多くの場合は通帳を拾った親切な人はその権利を放棄してくれているのです。
預金通帳を含む有価証券類の落とし物は、東京都だけでも約32万件あります。全体の10%以上です(2021年)。有価証券類という分類ですが、通帳も多いのではないでしょうか。
落とし主のもとに戻ったのは37.3%。財布類が70.5%であるのに対し圧倒的に少数です。通帳は簡単に再発行できるので、落とし主はわざわざ交番に遺失物届けを出さないのかもしれません。
預金通帳の価値をどう判断するか
なくした預金通帳を届けてくれた人へのお礼はどうなるのでしょうか。
実際には預金通帳自体に価値はなく、預金残高がその価値と言えます。
しかし、1億円の預金があれば、預金通帳の価値は1億円と主張する人もいそうです。
ただし、預金を引き出すには預金通帳のほかに印鑑が必要ですし、本人確認を求められることもあります。通帳だけ持った他人が預金を引き出すのは簡単ではなく、通帳そのものに預金残高の価値があるという主張は乱暴すぎるでしょう。
判例には、預金通帳の価値を問うものはありませんが、謝礼である報労金は法的な権利であり、当事者間で話し合いがつかなければ、訴訟で妥当な報労金の額を争うことになります。
重要なのは通帳の価値よりも個人情報
たとえ預金通帳が誰かの手に渡っても、預金を引き出される可能性は低いでしょう。
むしろ気を付けなければならないのは、預金通帳から読み取れる個人情報です。預金通帳には収入や支出の額のみならず、振り込んだ相手先まで記されています。通帳を見れば、その持ち主がどんな生活を送っているかある程度分かります。
預金通帳は個人情報の宝の山であり、その情報には大きな価値があるのです。
文・高村阿木夫(現役銀行員のマネーライター)
編集・dメニューマネー編集部
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