離婚時に年金を分割したら支給額が減った──。
年金制度には、離婚時に配偶者から年金を分割してもらう「年金分割」という仕組みがある。離婚を考えたとき、専業主婦やパートで収入が低く将来もらえる年金が多くない人は、年金分割を受けようとするかもしれない。しかし、知らないと損する恐れがある。次の注意点をよく理解し、本当に年金を分割する必要があるか見極めよう。
注意1 年金の全額を分割するわけではない
年金分割では、夫婦2人のうちもらえる年金が多いほうから少ないほうに分割する。分割の仕方は、夫婦で話し合いをして合意した割合で分ける「合意分割」と、合意なしに2分の1ずつ分ける「3号分割」の2種類がある。
注意しなくてはならないのが、年金の全額を分割するわけではないことだ。
分割の対象になるのは、「結婚していた期間の厚生年金」のみ。国民年金や企業年金は対象ではない。
分割を受ける側の年金額(老齢基礎年金を含む)がひと月あたりどれくらい増えるのかというと、分割前の平均受給額は5万1,585円、分割後は8万2,358円。つまり、ひと月あたり3万円ほど増えている(厚生労働省「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」)。
年金の全額を分割すると勘違いしていると、分割を受ける側は「年金があまり増えなかった」と感じるかもしれない。
注意2 離婚後2年以内に手続きしないと分割できない
年金分割を請求したいなら、離婚してから2年以内に、年金事務所または年金相談センターで手続きする必要がある。
年金の受給開始時期がまだ先だからといって後回しにすると、分割の請求自体ができなくなるので、手続きは早めにしておこう。
例外として、年金を分割する側が離婚後に亡くなった場合は、亡くなってから1ヵ月以内に手続きしないと分割できなくなる。
注意3 振替加算の支給が停止になることがある
会社員だった夫(妻)がいる65歳以上の妻(夫)に対して、老齢基礎年金に「振替加算」というものが加算されることがある。振替加算は基本的には離婚後ももらえるが、年金分割を受けることで停止されるケースがある。これはなぜだろうか?
振替加算は、65歳以上の妻(夫)が厚生年金に加入していた期間が240ヵ月以上の場合は支給されない。
年金分割を受けている期間は「離婚時みなし被保険者期間」として、厚生年金に加入していた期間にカウントされる。そのため、振替加算をもらい始めたときは240ヵ月未満であっても、年金分割を受けたことで240ヵ月に達すると振替加算が停止される。
該当する人は、振替加算と年金分割のどちらを優先したほうがお得か確かめるべきだ。
年金分割の仕組みをよく理解していないと「もらえる年金がもっと増えると思っていた」「気づかぬうちに申請期限を過ぎていた」といったことになりかねない。離婚を考えたら早めに理解しておこう。
文・廣瀬優香(フリーライター)
編集・dメニューマネー編集部
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