ニトリの中間決算は減益で予想を下回った。さらに、米国ニトリの撤退を決めた。しかし、ニトリの米国撤退はポジティブに受け止められ、株価は堅調だ。米国撤退の一因は米中摩擦にありそうだ。ユニクロ、無印、カゴメなどへの影響を含めて見ていこう。

予想を下回る減益　円安で採算悪化

家具・インテリア最大手ニトリホールディングス <9843> が9月30日に発表した2023年3月期中間決算（3〜8月）は、売上は2％増の4,230億円だった。

コロナ禍の巣ごもり需要の反動で主力のニトリ事業が低迷。既存店売上は3〜9月で2％減と前年割れが続く。本業の利益を表す営業利益は11％減の690億円。

会社予想に対し、売上で138億円、営業利益で84億円未達だった。

ニトリのビジネスモデルは、ユニクロを経営しているファーストリテイリング <9983> の家具版だ。

自社企画商品を低コストの海外で生産して販売するSPA（製造小売り）である。円安だと輸入コストが上昇するため、今上期では71億円の為替差損を計上した。コンテナ船の運賃高騰もコストを圧迫した。

2023年3月期（13ヵ月変則決算）の売上9,636億円（前期比19％増）、営業利益1,506億円（同8％増）の予想は据え置いた。

ニトリ、不振な決算でも株価は堅調な理由

決算翌日の株価は売り気配で始まり一時6％安まで売られた。しかし、急速に下げ幅を縮小し、引けは1％安。翌日以降3連騰で安値からは15％も上げ、決算発表前の株価を上回った。

減益の主な理由がコロナ禍の巣ごもり需要の反動減と円安で本質的な問題ではないからだろう。輸送価格の高い家具などの一部商品で10～20%の値上げをするため、既存店がプラスに転じる可能性もありそうだ。

採算改善策も打ち出した。家具類の値上げに加え、産地移行、原材料変更、海上輸送ルートの最適化などの原価低減策、セルフレジの導入拡大による経費削減策などを挙げた。米国からの撤退は年5億円程度の赤字削減効果がある。

米国撤退の背景には米中摩擦問題？

米国ニトリは、ピーク時には5店舗あったが、残る2店舗を2023年4月までに閉店する。コロナの影響ももちろんあるが、撤退の一因は米中摩擦だ。トランプ政権時代の2019年、中国からの輸入商品すべてに25％関税を課した。23年まで4年間の措置だったがさらに4年継続する可能性が高い。

中国・ASEANからの関税率が1000％になった。これは、価格の10倍の額の税金が乗せられてしまうということ。

たとえば1万円のマットレスを輸出すると、関税が10万円乗せられる。これでは、原価だけで11万円になってしまう。当然のことながら、ここに利益をのせて売る必要がある。

本来は1万円程度のものなのに、それを10万円以上で売らないと採算がとれないわけだ。それでは売れない。勝負できるはずがない。

ニトリは、中国51店、台湾47店、マレーシア2店、シンガポール1店とアジアに101店を展開している（2022年8月末）。今後は、アジアを強化していく考えだ。

中国の新疆ウイグル自治区の人権問題も根が深い。2021年3月、アメリカを中心とする欧米諸国が中国に対し、ウイグルでの強制労働などの人権侵害を続けているとして経済制裁措置を発動した。

ファーストリテイリングのユニクロの男性用シャツが、ウイグルの綿花で製造された可能性があるとして米国への輸入が差し止められた。強制労働と関連がない綿を使っていたようだが、中国での不買運動懸念で株は売られた。

無印良品の良品計画 <7453> はウイグルで生産されるコットンの調達を停止したことから中国での不買活動が活発化するとの懸念、カゴメ <2811> はウイグルで生産されたトマト加工品の使用を取りやめたことで、2021年に株価が下がる場面があった。

米国では2022年6月にウイグルからの輸入を原則禁じる法律が施行された。企業はウイグルから商品を輸入する場合、生産履歴の確認でコストと手間が必要だ。米中摩擦は、半導体などの先端分野だけでなく様々な企業に影響を与えている。

文/編集/写真・dメニューマネー編集部

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