今では世界中のニュースをほぼリアルタイムで読むことができますが、金融や経済のニュースは難しい言葉も多く、「結局このニュースを資産運用にどう活かせば良いのか分からない……」という人も多いでしょう。
筆者が10年以上に渡りチェックしている日経新聞、ロイター、ブルームバーグなどの媒体は、読みごたえがある記事が多い一方、資産運用初心者にとっていささかハードルが高いことも否めません。
本連載では資産運用初心者向けに、経済ニュースをどのように読み解いていけば良いか解説していきます。
**「21マスと4人のプレイヤー」という考え方
第1回で、金融市場と呼ばれるものの正体は、21マスのうえで、4人のプレイヤーによって行われるマネーの動きそのものと説明しました。
また、私達がお金を増やそうと日々取り組んでいる資産運用や投資は、4人のプレイヤーがこの21マスのなかで次にどう動くかを予想するゲームと説明しました。
本連載で最も重要な概念なので、表を再掲します。
米国 | 欧州 | 日本 | 中国 | 新興国 | |
為替 | 1 | 5 | 9 | 13 | 17 |
債券 | 2 | 6 | 10 | 14 | 18 |
株式 | 3 | 7 | 11 | 15 | 19 |
不動産 | 4 | 8 | 12 | 16 | 20 |
商品 | 21 |
しかし、これだけでは4人のプレイヤーがどのような思考回路で、21マスのうえでマネーを動かしているのかは見えてきません。そこで、抑えておきたいのが「市場のテーマ」です。
第2回は「市場のテーマ」について解説します。
個別企業のニュースを追いかけるのではなく、大きな視点から金融市場を見る
個人投資家のなかには「○○株式会社が新技術の△△を開発」「××株式会社と□□株式会社が資本業務提携」といった類のニュースを追いかける人がいます。
このようなニュースは、既にその個別銘柄を保有していて、売却or買い増しor様子見の判断を下す場合には重要な判断材料です。しかし、21マス上の大きなマネーの流れには、ほとんど影響を与えません。
個別企業に関するニュースで、個別銘柄の売買を仕掛けることは、腕に覚えのある中級者以上が実践すべきことです。資産運用初心者は、もっと大きな視点から金融市場を見るのが良いでしょう。
「市場のテーマ」に関するニュースに注目する
どのようなニュースに注目すれば良いのでしょうか。それは「市場のテーマ」です。21マス上のマネーの大きな動きを予測、もしくは分析するためには「いま金融市場のテーマとなっている(最も注目されている)ことは何か」を把握することが極めて重要です。
金融市場は生き物であり、「市場のテーマ」は、常に移り変わっていきます。
2020年の「市場のテーマ」は間違いなく「新型コロナウイルス(の感染状況)」でした。不思議に思うかもしれませんが、感染が拡大すればするほど、一部の業種を除き、株式などのリスク資産は上昇しました。
市場関係者が「コロナの感染が拡大すればするほど、実体経済の落ち込みから来るマイナス要因よりも、中央銀行のサポート(金融緩和)が期待できるプラス要因のほうが大きい」と判断したためです。
現在のテーマは「実体経済の回復」「金利上昇」「金融引き締めのタイミング」など
ワクチンの高い有効性が広く認知された現在は、コロナを克服する未来(アフターコロナ)が強く意識され、「市場のテーマ」は「実体経済の回復」「金利上昇」「金融引き締めのタイミング」などに移行しています。
21マス上の動きとしては、2番(米国の債券)からマネーが引き上げられており、3番(米国の株式)に流入しています。コロナ対策の財政出動による財政懸念や、実体経済の回復期待からインフレ期待が高まり、「債券売り・株式買い」が加速しているのです。
(ちなみにこれは金融市場では「グレートローテーション」とも呼ばれている現象です。一方で、中央銀行の金融緩和がさらに強化される可能性は低く、むしろ市場関係者は「いつ中央銀行が金融引き締めに転じるか」と戦々恐々している状況でしょう)
「市場のテーマ」とは21マス上のマネーのトレンド(矢印の強さ)
市場関係者の全員(少なくともプロ投資家の全員)が、その時々のテーマを念頭に置きながら、21マスのうえでマネーを動かしているのです。「市場のテーマ」とは、21マス上のマネーのトレンド(矢印の強さ)なのです。
時間に限りがあるなかで、金融市場から溢れ出る全てのニュースに目を通すのは不可能と言えるでしょう。プロ投資家も全てのニュースをチェックしているわけではありません。
ただ、プロ投資家であれば現在の「市場のテーマ」を理解しているので、無数の経済ニュースのなかから、優先順位が高い順に確認し、情報収集の効率性を高めているのです。そして、より深堀りすべきニュースの分析に力を注ぐのです。
「そう言われても、市場のテーマが何か分からないと、優先順位を決めることができないじゃないか」と思った方もいるかもしれません。「現在のテーマは何か」を判断するためには、「市場のストーリー」を理解する必要があります。
第3回は「市場のストーリー」について解説します。
文・菅野陽平(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
(2021年4月17日公開記事)
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