なぜ不景気なのに株価が上昇するのか? 3つの理由

2021/09/18 15:50

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コロナ禍による不景気ムードが世間に漂う一方、株式市場は依然として高い水準を推移している。米国株は史上最高値を更新し、日経平均株価は約30年ぶりの高値圏だ。なぜ、不景気なのに株価は上昇しているのか。 理由① そもそも実態経済と株価は連動しないことが多い 日経平均株価はコロナ禍に苦しむ実体経済の現状と掛け離れているのが不思

コロナ禍による不景気ムードが世間に漂う一方、株式市場は依然として高い水準を推移している。米国株は史上最高値を更新し、日経平均株価は約30年ぶりの高値圏だ。なぜ、不景気なのに株価は上昇しているのか。

理由① そもそも実態経済と株価は連動しないことが多い

日経平均株価はコロナ禍に苦しむ実体経済の現状と掛け離れているのが不思議かもしれない。しかし株式市場は将来を予想し、思惑で動くものだ。

つまり投資家は、「コロナで抑制された消費行動がコロナ終息後に急回復するだろう」、「コロナをきっかけにデジタルシフトが加速し、IT企業の業績が伸びるだろう」といった思惑を巡らせ、将来的に株価上昇期待が見込めそうな企業に投資をしようと考えるのだ。

株式市場は実体経済と時間軸が異なることを覚えておきたい。

理由② 政府による景気対策の資金が株式市場に流れ込んだ

コロナ禍でダメージを受けた経済、企業、国民を救うために、世界の主要国の政府と中央銀行が景気対策として財政投入やゼロ金利導入などの大胆な金融緩和を実施した。その結果、企業や個人に行き渡った資金がスマホ証券(スマートフォンを使って投資ができるサービス)などを通じて株式市場に流れ込んだ。これが株価を押し上げたひとつの要因とされている。

米国ではトランプ政権下で2020年3月から4月にかけて4度に渡り、約3兆ドル(約320兆円)もの経済対策を実施した。バイデン新大統領も1.9兆ドルの追加経済対策を決め、継続的な景気刺激策を実施する姿勢を見せている。米政権・議会による現金給付は3回実施されており、合計で1人最大3,200ドル(34.2万円、1ドル107円換算)に上る。

日本でも2020年4月20日に、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急経済対策を決定した。事業規模は約117兆1,000億円とリーマンショック時の56兆8,000億円を超えて過去最大だった。所得制限を行わず1人あたり10万円の現金給付を決めた。さらに、中小企業には最大200万円、個人事業主には最大100間年の給付、民間金融機関による実質無利子、無担保の融資制度も創設した。

理由③ 各国中央銀行が金融緩和政策を通じて「金余り状態」を作った

株高の一番の要因とされているのが、日米欧の中央銀行による金融緩和政策だ。一言で説明すると、経済活動を止めないように経済の中にお金をジャブジャブにし、資金を円滑に回し続ける状態を作って景気悪化を食い止めようとする政策だ。

金融緩和政策のアプローチは、(1)金利引下げと(2)金融市場にお金を供給する2つに分けられる。

(1)金利引下げ

金利が下がることでお金を借りている企業や個人の負担が減るのは理解しやすいだろう。

米国の中央銀行である米連邦準備理事会(FRB)は、コロナ禍の緊急対応として、20年3月に2度の緊急利下げを行い、1.5%だった政策金利を0〜0.25%へ引き下げた。ゼロ金利は、リーマン・ショック時以来の危機対応モードだ。

日本銀行も20年3月、新型コロナウイルスで苦しむ企業に融資する原資をメガバンクなどの金融機関にゼロ金利で供給することを決めた。

(2)金融市場にお金を供給

金融市場は「買い手」と「売り手」がいて売買が成立する。存在感の大きい日銀などの中央銀行が株式市場の大きな「買い手」を担うということだ。禁じ手といってもいいだろう。

日銀は株式市場をサポートするために、日経平均株価東証株価指数TOPIX)に連動する金融商品(ETF:上場投資信託)の購入を進めてきた。元々2010年のリーマンショック時の株価急落時からスタートしており、購入規模は16年7月以降、年6兆円目安だったものが、コロナ危機による株価急落をうけて、20年3月に上限を12兆円へと倍に引き上げている。

その結果、日本が世界に誇るアパレル企業「ユニクロ」を経営するファーストリテイリングの大株主は日銀となっている。日銀は同社の20%程度を保有する実質の筆頭株主だ。日銀がETFを通じて保有する日本株は約50兆円に達し、ファーストリテイリング以外にも国内企業の実質の大株主になっている。

このあたりへの配慮からか、日銀は21年3月にETF購入の12兆円枠を維持しながらも、目安の6兆円を削減した。株高の局面では購入を見送り、市場の混乱時に積極的に買うスタンスに変更した。購入対象も日経平均株価連動ETFからTOPIX連動ETFのみにするなど、買入れ対象も縮小している。 今後は、日経平均株価の上昇が修正されていく可能性もあるので注意が必要だろう。

金余りが株価を押し上げる大きな要因となった

世界的な規模の財政政策と金融緩和政策で、低コストの潤沢な資金が企業や個人に回った。金利が低下したことで、世界中の投資家や富裕層がより利回りの高い金融商品を求めてリスク性の強いマネーとしてリターンを求めて株式市場に流れ込んだ。まさに「金余り」が株価を押し上げる大きな要因となったのだ。

文/編集・dメニューマネー編集部

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