■連載「お金の心理学」第3回 「無意識」のうちに判断を鈍らせるもの
次の3つのシーンで自分に当てはまるものがないかチェックしてみてください。
・1「人気のケーキ屋さんに並び始めて30分。ここまで並んだんだから、絶対にケーキを買って帰ろう」
・2「前売り券を購入した舞台。外出する気分じゃないけど、もったいないから行こう」
・3「企業分析に時間を割いて選んだ株式の銘柄が、急激に値下がりした。じきに回復するかもしれないから、もう少し待ってみよう」
どうでしたか? 実はこの3つのシーンでは、いずれも、おそらく判断した本人は意識していない何かが影響しています。それはどんなものでしょうか。
1つ目のケーキ店の例では、並んだ時間が長いほど、「買わずに帰る」という選択肢を選びにくくなります。「並んだ時間」が判断に影響を及ぼしているのです。
2つ目の前売り券の例では、前売り券をもらった場合より購入した場合のほうが、無理をしてでも見に行く傾向があります。「前売り券の代金」が判断に影響を及ぼしているのです。
3つ目の投資の例では、時間をかけずに選んだ銘柄より、時間をかけて選んだ銘柄が値下がりした時の方が、損切をためらってしまいます。「銘柄選びの労力」が判断に影響を及ぼしているのです。
■私たちを惑わす「無意識」の正体――サンクコスト効果
3つのケースで出た「並んだ時間」「前売り券の代金」「銘柄選びの労力」は取り戻せません。いわば、支払ってしまったコストといえます。
支払ったコストが大きいほど、「コストを回収したい」という心理状態に陥ります。そのため、時には冷静さを欠いた判断をしてしまうことがあります。行動経済学では、これをサンクコスト」と呼び、すでに支払ったコストが判断に影響することを「サンクコスト効果」といいます。コストには、お金だけでなく、時間や労力なども含まれます。
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■「支払ったコストをなかったもの」として考えることで悪影響を避ける
サンクコストが判断に影響を及ぼすことが、一概に悪いというわけではありません。労力をかけた分だけ、何かしらのメリットを期待するのは当然の心理でしょう。それでも望ましい判断ができなくなるのは避けたいものです。
サンクコストのせいで判断力が鈍ってしまうのを防ぐには、どうすればいいのでしょうか。
それは、「支払ったコストがゼロだとしたら?」と仮定することです。「もったいない」という気持ちが判断力を鈍らせるのですから、「もったいない」状況を一旦、なかったことにします。
3つのシーンではどう考えるべきかというと……
1 ケーキ店の例
まったく並んでいなかったとして、列の長さなどを見て、今から待ちたいと思うか
2 前売り券の例
前売り券の代金は自分で払っていないとして、体調と相談して舞台を見に行きたいと思うか
3 銘柄選びの例
選んだ時間と労力はなかったとして、この値下がり幅で回復を待つべきか。
このように考えてみることで、後悔のない判断ができる可能性が高まります。特に3の銘柄選びの例では、その時点で「今の価格で買いたいと思うか」と考えてみるとよいでしょう。
買い物にしろ投資にしろ、サンクコストにしがみついて「もったいない」という気持ちがあると、判断を誤りかねません。すでに支払ったコストが判断に影響を及ぼすことを知り、冷静に行動を選択しましょう。
文・木崎 涼(ファイナンシャル・プランナー)
編集・濱田 優(dメニューマネー編集長)
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