退職・老後が近い

制度の変更で退職金に40万円の税金がかかるようになる?

2023/06/26 18:00

退職金の受け取りが近い50代の会社員や公務員は、勤続年数が20年以上の人に対する退職所得控除が減らされる関係で40万円以上の増税になるかもしれないので、岸田内閣の方針に注意したほうがよさそうです。年内には「新しい資本主義実現会議」から税制変更が発表される可能性があります。 退職金がない人も、iDeCoや企業型DCを受け

退職金の受け取りが近い50代の会社員や公務員は、勤続年数が20年以上の人に対する退職所得控除が減らされる関係で40万円以上の増税になるかもしれないので、岸田内閣の方針に注意したほうがよさそうです。年内には「新しい資本主義実現会議」から税制変更が発表される可能性があります。

退職金がない人も、iDeCoや企業型DCを受け取るときの資産額によっては増税になるかもしれません。

現在議論されている税制変更が実現するとどうなるか、確かめておきましょう。

退職金にかかる税金が増える

もしも退職所得控除が減らされると、退職金にかかる税金が増えます。控除とは、所定の額を所得から引いて税金を計算する際の課税所得を少なくし、結果として税金が安くできる仕組みのことです。

たとえば、大卒で勤続年数35年の場合、平均退職金はおおよそ1,900万円(2021年賃金事情等総合調査、中央労働委員会)ですが、退職所得控除があるため、課税の対象となる額は、わずか25万円です。

しかし、岸田内閣で議論されている退職所得控除の優遇措置の見直しが実現すると、課税の対象は250万円に跳ね上がります。

退職金をもらうときは会社からの給料ももらっているため、退職時の年収を600万円、課税所得を300万円とすると、退職金とあわせた所得税は現行と比べて44万5,000円の増税です。

iDeCoや企業型DCを受け取るときの税金が増える

iDeCoや企業型DCに入っている人にも影響があり、その資産額や受け取るタイミングによっては、税金が増える可能性があります。

たとえば、iDeCoや企業型DCに加入して30年間、積立投資して資産額が約1,900万円(毎月2万3,000円、年利5%)になった人が、iDeCoや企業型DCを「一時金」として受け取り、受け取った年の年収が600万円、課税所得を300万円とすると、今と比べて30万円の増税になります。

退職金がある人は、iDeCoや企業型DCを先に受け取り、退職金を5年以上あとに受け取ったほうがよいでしょう。「退職所得控除の5年ルール」といわれ、退職金を受け取る年から5年以上前にiDeCoや企業型DCの一時金を受け取っておけば、退職所得控除がどちらにも使えます。

退職金がある人はiDeCoの開設は一旦見合わせたほうがいいかも

退職金を受け取るタイミングがiDeCoの一時金を受け取るのと同じ、またはiDeCoを受け取ってから5年経たたない場合は、受け取り時に支払う税額が大きくなってしまうので、iDeCoの開設は税制変更の内容が決まるまで見合わせたほうがよいかもしれません。

iDeCoは一度開設すると原則として60歳まで解約できないだけでなく、毎月口座管理手数料を払わなければいけないからです。

年収500万円の人が月2万3,000円をiDeCoで積立投資をすれば、30年間で82万8,000円の所得税を軽減できますが、退職金の税制変更によってはそれ以上の所得税を支払うことになるかもしれません。

iDeCoには年金で受け取る方法もありますが、所得税を払わずに済むのは60歳~65歳までの5年間で300万円までです。所得税がかからない300万円だけを年金として受け取り、残り1,600万円を一時金として受け取る方法はありますが、いずれにせよ一時金の金額が大きいため、あまり節税にはならないでしょう。

なお、ここでの税金の計算は復興所得税と住民税は考慮していません。

文・北川真大(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部

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