退職・老後が近い

「老後破産」はなぜ起こる?60歳以上で破産する人はどれくらいいる?実態と対策

2023/06/25 11:00

「老後破産」という言葉が気になっている人は多いようだが、そもそも老後破産とはどういうもので、どれくらいの人が困っているのか、またそうならないように何をすればいいのかを問われて、すぐに答えられる人は少ないだろう。 老後破産する人はどれくらいいる? 老後破産とはその名の通り、老後、定年退職後の生活が立ち行かなくなることだ。

「老後破産」という言葉が気になっている人は多いようだが、そもそも老後破産とはどういうもので、どれくらいの人が困っているのか、またそうならないように何をすればいいのかを問われて、すぐに答えられる人は少ないだろう。

老後破産する人はどれくらいいる?

老後破産とはその名の通り、老後、定年退職後の生活が立ち行かなくなることだ。

「自己破産」は、債務(借金)を返済できなくなった個人が裁判所に破産の申立てをし、裁判所が債務者に対して破産を宣告することを指すが、一般に「破産」という言葉は、必ずしもこうした定義を満たしているとは限らず、「とてもお金に困っている、借金が増え続けている」状態をいうこともあるようだ。毎月の収支が赤字、といってもいいかもしれない。

自己破産を選ぶ人がどれくらいいるかというと、1年あたり約7万件。最新の2022年(令和4年(速報値)は6万4,832件だ。前年の2021年は6万8,240件からは減っている。

ここ20年くらいを振り返ると、2003年をピークに2015年までは減っていたが、2016年には13年ぶりに増加に転じたものの、2019年以降は再び減少している(2018年から23年までは、7万3,084件、7万3,095件、7万1,678件、6万8,240件、6万4,832件)。

そのうち60歳以上の高齢者がどれくらいいるかというと、2020年のデータをみると25.72%。自己破産した4人に1人が高齢者だった計算になる。

老後の生活にはいくらくらい必要?

自己破産に至らずとも、生活に困っている人は少なくないわけで、ここで「破産している」状態を「毎月の収入よりも支出が多い」とすると、「いくら収入があればいいのか」「老後の生活にはいくらくらいかかるのか」を知っておく必要があるのが分かる。

各種の統計やアンケートをもとにすると、老後の世帯生活費は毎月およそ28万円必要だ(ただし、ゆとりある老後を送ることを考えるとこれでは足りず、35〜36万円は欲しい)。

しかし、平均的な老齢年金は毎月約22万円なので、ゆとりある生活を送るどころか、必要な生活費にも年金だけでは足りないことになる。

毎月6万円足りない状態が60歳から80歳までの20年続くとすると、不足額は1440万円。100歳までの40年とすると2880万円となる。

もちろん60歳以上も働くのが珍しくない時代なので、「60歳以降、年金しか収入の手立てがない」という人ばかりではないだろう。

ただ、たとえば定年後のバイト・パートでは、現役世代ほどの収入は見込めないし、たとえ同じ職場で定年後にも再雇用されたとしても、収入は減ってしまう。

いずれにせよ、老後の生活にはいくらくらい必要かが分かれば、あとはそれをどうやってねん出するかを考えればいい。

既に触れたように、老後も働き続けて収入を得られるだろうが、歳を経ると病気やけがで働けなくなる可能性も高まるので、老後破産をしないためのカギは、「老後になる前にどれだけ準備できるか」になりそうだ。

老後破産に陥らないために現役のうちにできること

結果として、「将来への備えを早くからしておきましょう」という、身もふたもないソリューションになりそうだが、一発逆転を狙ったギャンブル、ハイリスクハイリターンな方法をとるのでなければ、長い時間をかけてコツコツ準備するしかない。

現役世代のうちにまずすべきことは、こういったことが考えられる。

・ いまの毎月の収入と支出を把握する
・ 現役の期間のライフプランを立て必要な額を見積もる
(特に子供の進学や住宅購入など大きな支出を伴う出来事) ・ 年金がどれくらい受け取れるか把握しておく

将来というより、まず今、出発点の状況の整理が欠かせない。そのうえで、毎月の支出から無駄を削って節約し、投資や資産運用にどれくらいあてられるか試算して増やすことを考えたい。支出をどんなに削っても限界がある。

ただし、投資や運用は必ずしも増やせるとは限らず、減る恐れもある。また、投資額が少ないと得られる利益も小さいため、ある程度まとまったお金があるほうが投資で得られる果実は大きくなることは覚えておきたい。

そうしたリスクを考えると、投資や運用は少しでも長くしたほうがよい。なぜなら、不足する老後資金の額が同じでも、老後まであと5年しかない人と、20年ある人とでは、投資戦略はもちろん異なるし、安心感も違うからだ。時間があれば、たとえ一時的に株価が下がっても、また戻る可能性もあるし、焦らなくて済む。

こうした相談は他人にはしにくい。家族の状況や、老後にどういう暮らしをしたいかは人・家庭それぞれでだし、「いくら稼いでいるか」「いくら貯金があるか」「何にいくら使っているか」というお金の問題そのものだからだ。

ただ、個人で考えて実行するのには限界もあるので、不安なときはFP(ファイナンシャル・プランナー)やIFA(資産アドバイザー)、また金融機関などで相談することも視野に入れるといいだろう。

いずれにせよ、老後、60歳や65歳は誰にもくるので、早めに準備に取り掛かることが、老後破産に陥らないために必要なことと言えるのではないだろうか。

文/編集・dメニューマネー編集部

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