退職金の「増税」が騒がれていますが、すべての人の税金が増えるわけではありません。ただ、一つの企業に長く勤めている人や公務員は、もしかしたら税金が増えて退職金の手取りが減る可能性があります。制度が変わると税金が増える人の特徴を知り、自分が当てはまらないか確かめましょう。
退職金の非課税枠が小さくなるかもしれない
退職金には税金のかからない非課税枠がありますが、2024年の改正で非課税枠が小さくなる可能性があります。
退職金の非課税枠は、勤続20年までは1年ごとに40万円ずつ増え、それ以降は1年ごとに70万円ずつ増えます。勤続20年を超えると非課税枠が大きく増えるため、有利です。
しかし、勤続20年を境に税金が優遇されることで、転職などで自由なキャリアを選びにくくなっているといわれてきました。政府はそのことに触れつつ「退職金にかかる税金を見直す」という方針を今年の6月に出しました。
制度が変わると損するかもしれない人の特徴
制度がどう変わるかは未定ですが、勤続20年を境に税金が優遇される制度が見直されるとしたら、次の両方に当てはまる人は税金が増える場合があります。
・勤続20年を超えている、もしくは超える予定
・もらえる退職金が多く、非課税枠を超える予定
具体的に、どのくらいの退職金をもらうと税金が増える可能性があるのでしょうか。
60歳まで勤めたときの非課税枠は540万円減る
勤続20年を超えたときの優遇がなくなると、勤続20年を超える人は退職金の非課税枠が減ります。
22歳から60歳まで38年勤め、2,000万円の退職金をもらう例を見てみましょう。
今の制度なら非課税枠は
40万円×20年+70万円×18年=2,060万円
なので退職金は非課税枠に収まり、税金はかかりません。
しかし勤続20年超えの優遇がなくなり、1年ごとに一律40万円ずつ非課税枠が増えるとしたら、非課税枠は
40万円×38年=1,520万円
になり、今の制度と比べて540万円も減ります。
すると、2,000万円の退職金をもらったときに480万円分が非課税枠を超えてしまいます。
退職金の税金は非課税枠を超えた部分の半分にかかるため、所得税が約14万円と住民税が約24万円の合計約38万円の税金がかかる可能性があります。
勤続20年超えの優遇がなくなると決まったわけではありませんが、人によっては制度が変わることで退職金にかかる税金が増え、手取りが減るかもしれません。
自分がもらえる退職金の目安は退職金規定などを見れば分かるので、気になる人は確かめておきましょう。
今後は、退職金の仕組みが変わるかもしれないことも踏まえて、働き方を考えることが大切です。
なお、税制改正の方針は今年の12月に公表される予定で、具体的な変更の内容や変更の時期は未定です。
文・木崎 涼(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
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