公的年金の受け取りを遅らせて、年金の金額を増やす「繰り下げ受給」だが、75歳まで繰り下げると損をするかもしれない。一見メリットが多そうな繰り下げ受給だが、制度を使う場合、どのようなことに注意すればいいのだろうか?
年金の繰り下げ受給で「払い損」にならない年齢は?
公的年金の受け取りを遅らせる「繰り下げ受給」をすると、もらえる年金額が増えるが、男性は“払い損”になるかもしれないので注意が必要だ。
75歳まで繰り下げると損をするかも
年金を繰り下げると年金がどのくらい増えるかというと、繰り下げ1ヵ月につき0.7%なので、70歳まで繰り下げると42%増、75歳なら84%増になる。
たとえば、65歳から国民年金と厚生年金を合わせて15万円もらえる人が、両方を繰り下げると、70歳までの繰り下げで21万3,000円、75歳までなら27万6,000円に増える。
なぜ男性が損するかもしれないかというと、女性に比べて平均寿命が短いからだ。2021年の男性の平均寿命は81.47歳で、女性の87.57歳と比べると6歳近く離れている。
年金を繰り下げずに65歳からもらい始めるのと、年金を70歳まで繰り下げた場合とで、繰り下げたほうがもらう年金の総額が上回るのは11年後の81歳からだ。また、75歳まで繰り下げるなら、86歳からとなる。
つまり繰り下げをするなら、少なくとも平均寿命まで生きないと元が取れないわけだが、残念ながら、何歳まで生きられるかは分からない。
繰り下げを選ぶとしても、「絶対に長生きする」という自信がなければ70歳までにしたほうがよいかもしれない。
90%以上の高齢者が公的年金の「繰り下げ受給」を選択しない納得の理由
公的年金の繰り下げ受給を利用すれば、公的年金を増やせる。しかし、ほとんど利用されていないのが実態だ。一見メリットが大きそうな繰り下げ受給だが、なぜ利用されていないのだろうか。
繰り下げ受給を選択する人は2%に満たない
厚生労働省が発表した「令和2年度版厚生年金保険・国民年金事業年報」によると、令和2年度では約3,420万人が国民年金を受給する権利を持っているが、そのうち繰り下げ受給を選択したのはわずか1.6%の約553万人だけという。
繰り下げ受給をするまで老後の貯蓄が持たない
受給年齢を70歳まで遅らせようとすると、65歳から70歳までは公的年金以外の何らかの収入が必要だ。
収入がない場合、老後の貯蓄の取り崩しが進んでしまうことから、やむを得ず繰り下げ受給を断念するケースもあるだろう。
税金や社会保険料が増加してしまうから
受給する公的年金にも税金や社会保険料がかかり、額面通りの金額がもらえないことがある。
そのため繰り下げ受給によって公的年金額が増額すれば、税金や社会保険料がかかるため、手取りが増えたという実感がわかないことから繰り下げ受給を選択しないケースも考えられる。
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90%以上の高齢者が公的年金の「繰り下げ受給」を選択しない納得の理由5つ
文/編集・dメニューマネー編集部
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