連載「これであなたも金融通 経済ニュースの読み方入門」第6回
今では世界中のニュースをほぼリアルタイムで読むことができますが、金融や経済のニュースは難しい言葉も多く、「結局このニュースを資産運用にどう活かせば良いのか分からない……」という人も多いでしょう。
本連載では資産運用初心者向けに、経済ニュースをどのように読み解いていけば良いか解説していきます。
21マスのうえで、4人のプレイヤーが動いている金融市場
この連載を通じて「金融市場」と呼ばれるものの正体は、21マスのうえで、4人のプレイヤー(中央銀行、金融機関、機関投資家、個人投資家)によって行われるマネーの動きそのものと説明しています。21マスは以下の通りです。
米国 | 欧州 | 日本 | 中国 | 新興国 | |
為替 | 1 | 5 | 9 | 13 | 17 |
債券 | 2 | 6 | 10 | 14 | 18 |
株式 | 3 | 7 | 11 | 15 | 19 |
不動産 | 4 | 8 | 12 | 16 | 20 |
商品 | 21 |
表示の関係上、上記は21番を除く1マスの大きさが均等になっていますが、第4回で述べたように、本来は1マスの大きさは均等ではありません。具体的には、米国市場である1〜4番が圧倒的に大きいことがポイントです。
それゆえに、金融や経済のニュースを読み解く際は「米国を中心に確認すべし」と述べました。今回は、その米国について解説していきます。
米国市場の大きさを体感しよう
第4回でも少し説明しましたが、米国市場の大きさを体感するために、改めて各種データを見ていきましょう。
まずは1番にあたる為替です。国際決済銀行(BIS)が3年ごとに調査している世界の為替取引量の最新資料(2019年版)によると、世界の為替取引量シェアの約半分(約44%)は米ドルです。もちろんシェア1位です。
次に2番にあたる債券です。三井住友DSアセットマネジメントによると(引用元はBIS)、2018年の債券市場時価総額は世界全体で約102.8兆ドルであり、米国債券市場の時価総額はその約40%を占めています。
次に、3番にあたる株式です。岡三証券によると(引用元はブルームバーグ)、2021年5月末の世界の株式時価総額は、115.2兆ドルであり、米国株式市場の時価総額は48.2 兆ドルで 41.9%を占めています。2位の中国に4倍近い差をつけています。
次に、4番にあたる不動産です。一般社団法人不動産流通経営協会によると、2017年の米国不動産の経済規模は、不動産市場に関連する建設・保険・モーゲージ等の業種を含めて2兆2,600億ドル(約248兆円)となっています。オープンハウスによると(引用元は財務総合政策研究所)、日本の不動産業の売上高は46兆5,363億円(2018年度)になっています。
不動産は関連する産業が広く、為替、債券、株式と違って明確な区切りがないため、正確な比較は難しいですが、米国と日本のGDPの差が約4倍であることを考えると(もちろん米国のほうが大きいです)、それなりに妥当な金額感ではないでしょうか。
米国のGDPで一番大きい項目は?
ここまで米国の市場規模について見てきました。明確に比較できる為替、債券、株式に関しては、世界全体の約40%のシェアを誇っています。いかに米国が大きい市場なのかが分かります。
ここからは、米国経済を見るポイントを解説していきます。外務省によると、2020年の米国の実質GDPは18兆4,226億ドル(約2,000兆円)でした。米国というと、大量生産スタイルの製造業が主流と思っている人がいるかもしれませんが、実はGDPの約7割を占めているのが「個人消費」です。
したがって、米国経済を見るときに重要なことは「個人消費の強さ(弱さ)」です。もちろん、製造業を含めた「雇用の安定」が個人消費に影響を与えることは言うまでもないですが、何が一番に影響を与えるかと言うと、それは個人消費なのです。したがって、米国の個人消費に関するニュースは、より重点的にチェックするようにしましょう。
個人消費の勢いを知る手がかり
具体的には、百貨店やスーパー等の小売・サービス業の月間売上高について調査した「小売売上高」、クレジットカードなどの回転信用、自動車ローン・教育ローン・移動住宅向けローンなどを集計した「消費者信用残高」、ブラックフライデーに象徴される年末商戦の規模などが参考になるでしょう。
消費者信用残高を挙げているのは、一般論として、米国の消費者には「借金してモノを買う文化」が根付いているためです。基本的に将来への自信がないと借金を膨らますことはできないので、この数字も個人消費の勢いを知る手がかりになります。
今回は米国市場の大きさや、米国経済の特徴について解説してきました。新しい学びがあった人は、これらのことを頭に入れて経済ニュースを読んでみて下さい。
文・菅野陽平(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
(2021年7月7日公開記事)
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