21マスの金融市場を見るときに重要な「2つのルール」【経済ニュースの読み方入門 第4回】

2021/06/17 06:00

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連載「これであなたも金融通 経済ニュースの読み方入門」第4回 今では世界中のニュースをほぼリアルタイムで読むことができますが、金融や経済のニュースは難しい言葉も多く、「結局このニュースを資産運用にどう活かせば良いのか分からない……」という人も多いでしょう。 本連載では資産運用初心者向けに、経済ニュースをどのように読み解

連載「これであなたも金融通 経済ニュースの読み方入門」第4回

今では世界中のニュースをほぼリアルタイムで読むことができますが、金融や経済のニュースは難しい言葉も多く、「結局このニュースを資産運用にどう活かせば良いのか分からない……」という人も多いでしょう。

本連載では資産運用初心者向けに、経済ニュースをどのように読み解いていけば良いか解説します。

・ 第1回
・ 第2回
・ 第3回

21マスのうえで、4人のプレイヤーが動いている金融市場

第1回で、金融市場と呼ばれるものの正体は、21マスのうえで、4人のプレイヤー(中央銀行、金融機関、機関投資家、個人投資家)によって行われるマネーの動きそのものと説明しました。資産運用や投資と呼ばれる行為は、4名のプレイヤーがこの21マスのなかで次にどう動くかを予想するゲームと言えるでしょう。

今回は、21マスの金融市場を見るときに重要な「2つのルール」を解説します。2つのルールは以下の通りです。

●【ルール1】1マスの大きさは均一ではない
●【ルール2】21マスのうえで動くマネーの総量は一定ではない

この2つのルールは、金融市場や経済ニュースを理解するときに、極めて大きな意味を持ちます。

【ルール1】 1マスの大きさは均一ではない

21マスは以下の通りです。縦に為替、債券、株式、不動産、商品を並べています。横には米国、欧州、日本、中国、新興国を並べています。金融市場を大雑把に区切ると、この21マスで構成されていると考えて下さい。

米国 欧州 日本 中国 新興国
為替 1 5 9 13 17
債券 2 6 10 14 18
株式 3 7 11 15 19
不動産 4 8 12 16 20
商品
21

表にすると、あたかもすべてのマスの大きさが同じであるように感じてしまいます。しかし、実際は1マスの大きさは均等ではありません。

たとえば、「米国の株式」である3番と「日本の株式」である11番は、どれくらい大きさが違うでしょうか。米国の株式全体の時価総額は約5,000兆円、日本の株式全体の時価総額は約700兆円ですので、実に約7倍の差があります。3番のほうが圧倒的に大きいということです。

国際決済銀行(BIS)が3年ごとに調査している世界の為替取引量の最新資料(2019年版)によると、世界の為替取引量シェアの約半分(約44%)は米ドルです。もちろんシェア1位です。一方、日本円は世界第3位とはいえ、シェアは約8%です。為替取引は相手先があるので一概には言えませんが、シェアで言うと、1番と9番は5倍以上の差がついています。

第1回でも述べた通り、基本的に、すべての資産において「中心は米国」です。なぜなら、あらゆる資産において、米国のマス(1,2,3,4)が一番大きいからです。金融市場の大きなお金の流れを把握したいときは、米国に関するニュースを中心に読むと良いでしょう。

金融市場21マスの1マスずつの大きさは均等ではありません。加えて、各マスの大きさは常に大きくなったり小さくなったり、アメーバのように変動しています。リーマンショックのような危機が起きると、その面積が一気に小さくなることもあります。

【ルール2】 21マスのうえで動くマネーの総量は一定ではない

もうひとつ重要な視点が、「21マスのうえで動くマネーの総量は一定ではない」ということです。言い換えると、21マスのすべての面積を合計した数字は、常に変化しているということです。

21マスに区切った金融市場という名のボードのうえで、4人のプレイヤーが駒(マネー)を動かしています。なかでも、第3回で述べたように、4人のプレイヤーのなかで「中央銀行」は、自分でお金を刷ることができ、極めて特別な能力を持つプレイヤーです。

中央銀行が金融緩和(お金を刷ること)したり、金融引き締めしたりすることで、21マスのうえで動くマネーの総量は変わります。2021年5月末現在は、各国の中央銀行が前代未聞の金融緩和を継続していることから、過去類を見ない巨額のマネーが21マスのうえで動いています。

21マスのうえで動くマネーの総量が増えているときは、マスによって濃淡はありますが、あらゆる資産価格は上昇しやすいと言えます(もちろん、局地的には下落する資産もあります)。

しかし今日においては、ここからさらにマネーの総量が増えることはあまり期待できません。むしろ、米国の中央銀行であるFRBは、金融引き締めのタイミングを探っている状況です。

金融引き締めは、21マスのうえで動くマネーの総量が減っていくということですので、マスによっては厳しい環境にさらされることが予想されます。したがって、FRBの動向に関するニュースは、感度高く収集するようにしましょう。

2つのルールをよく理解しよう

今回は、21マスの金融市場を見るときに重要な「2つのルール」を解説してきました。

●【ルール1】1マスの大きさは均一ではない
●【ルール2】21マスのうえで動くマネーの総量は一定ではない

この2つのルールをよく理解して、金融市場や経済ニュースを読み解いていきましょう。

文・菅野陽平(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部

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