連載 お金で買えないものはない?「恋愛×マネー」研究 第7回
本連載では、恋愛におけるさまざまなシーンを題材にし、マネー・お金を軸にした見方・考え方を検証。物心両面で満ち足りた、自分の理想の暮らしを手にするための戦略を考察します。
前回(第6回)は、コロナ禍の結婚事情について解説しました。今回(第7回)は、離婚する際の「財産分与」について──。
巷で言われる慰謝料は、実際は慰謝料ではない?
現代は「3組に1組が離婚する時代」と言われています。離婚で発生する費用として、もっとも有名なのは「慰謝料」ではないでしょうか。
著名人が不倫などで離婚を迫られた場合、週刊誌に「慰謝料○億円」という見出しが踊ることもあります。しかし、慰謝料の相場は、たとえ不倫などの不貞行為が原因だとしても、数百万円ほどと言われています。
巷で言われる慰謝料は、実際は慰謝料ではないのです。それでは、芸能人や有名人が離婚したときに報道される多額の費用は何を指しているのでしょうか。
共有財産を1/2ずつ分け合う「財産分与」
多くの場合、それは「財産分与」を指しているはずです。財産分与とは、離婚の際に夫婦が婚姻中に築き上げた財産を分けることを指します。第七百六十八条には、「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」と書かれており、法律に基づいた正当な権利です。
財産分与の対象となるのは、婚姻後に夫婦で協力して形成した財産(共有財産)のみです。婚姻前から保有していた財産や、相続や贈与を受けた財産などは共有財産には含まれません。
一般家庭の離婚の際は、そこまで大きな財産を築くことは少なく、慰謝料と同様に財産分与もそこまで高額になりません。
しかし、大きな資産を持つ富裕層や、成功した起業家の離婚となると、ときとして共有財産がとても大きな金額になります。
共有財産は、原則として夫婦が1/2ずつ分け合います。「夫婦で協力して築いた財産なのだから、均等に分けましょう」ということです。しかし、この「原則として」がやっかいです。「どこまでが共有財産の対象か」もしくは「5:5ではなく6:4や7:3が妥当だ」などを論点に、少しでも自分が有利になるために裁判へ発展することも少なくありません。
財産分与のケーススタディ
イメージがしやすいように、いくつかの具体的なケースを考えてみましょう。いずれのケースも離婚が発生したとします。
ケース1 引退間際の超有名スポーツ選手と一般女性が結婚
引退間際の超有名スポーツ選手ですから、相当な資産を構築したはずです。しかし、前述のように、結婚前の財産は共有財産になりません。しかも、引退後に男性があまり稼がなかった場合、財産は減る一方ですので、「共有財産はゼロ」という可能性も有り得ます。女性が結婚後に蓄財をしていた場合、女性から男性に支払わないといけない可能性すらあります。
ケース2 親は超富裕層だが本人は働いていないボンボンと一般女性が結婚
親は超富裕層ですので、莫大な資産を保有しているはずです。しかし、前述のように、相続や贈与を受けた財産などは共有財産になりません。
したがって、ボンボンの親が死去して、ボンボンに遺産が受け継がれたとしても、それは共有財産の対象外です。しかもボンボンは無収入ですので、「共有財産はゼロ」です。むしろ、女性が結婚後に蓄財をしていた場合、女性からボンボンに支払わないといけない可能性すらあります。
ケース3 貧乏時代に結婚。後に創業した事業が大当たりして自社株評価20億円に
20億円は「結婚後に一緒に築き上げた財産」ですから、共有財産とみなされ、離婚時には10億円ずつ分けることになります。男性側が経営者として身を粉にして働き、女性側は専業主婦で経営にノータッチだったとしても、原則としては10億円ずつ配分となります(前述のように裁判で6:4と傾斜がつくことはあります)。自社株評価が上がったのは女性側の「内助の功」があったから、という考え方です。
富裕層経営者にとって離婚は大きなリスクになりえる
婚姻後に急拡大した事業を保有し、明らかに夫婦間で事業貢献度が異なる3番のようなケースは、揉める確率が高いと言えるでしょう。
なお、3番は自社株評価20億円なので、手元に20億円の現金があるわけではありません。したがって、10億円分の財産分与をするにしても、自社株で渡すか(=経営のガバナンスが大きく揺らぐ)、借金して支払うかの二択になります。どちらもイバラの道でしょう。
このように富裕層経営者にとって、離婚はときとして大きなリスクになるのです。
文・元証券マンの恋愛相談所長K
編集・dメニューマネー編集部
(2021年7月18日公開記事)
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