家電量販店の売上高で、1位はヤマダ電機、2位はビックカメラだ。年間売上高はヤマダ電機が1兆7,500億円、ビックカメラが8,500億円と、2倍以上開きがあり、決して僅差というわけではない。ではこの両社、平均年収でもそれくらい差が開いているのか。
売上高で負けても平均年収ではビックカメラの勝ち
ヤマダ電機を展開するヤマダホールディングス<9831>とビックカメラ<3048>の過去10年間の平均年収の推移を分析してみる。両社は上場しているため、会計年度ごとに公表されている有価証券報告書を読めば、従業員の平均年収はすぐ分かる。
ヤマダホールディングスとビックカメラの平均年収の推移 | |||
---|---|---|---|
年 | ヤマダHD | ビックカメラ | 勝敗 |
2021年 | 5,419,856円 | 4,359,534円 | ヤマダHDの勝ち |
2020年 | 4,452,883円 | 4,660,763円 | ビックカメラの勝ち |
2019年 | 4,435,375円 | 4,584,929円 | ビックカメラの勝ち |
2018年 | 4,341,181円 | 4,516,550円 | ビックカメラの勝ち |
2017年 | 4,249,554円 | 4,647,800円 | ビックカメラの勝ち |
2016年 | 4,012,292円 | 4,738,952円 | ビックカメラの勝ち |
2015年 | 4,214,189円 | 4,634,617円 | ビックカメラの勝ち |
2014年 | 3,968,162円 | 4,461,563円 | ビックカメラの勝ち |
2013年 | 3,928,970円 | 4,314,495円 | ビックカメラの勝ち |
2012年 | 3,951,508円 | 4,176,647円 | ビックカメラの勝ち |
2011年 | 3,984,566円 | 4,151,231円 | ビックカメラの勝ち |
2021年にヤマダホールディングスの年収がぐっと上がっているが、これはヤマダ電機が持株会社(ホールディングス)体制へと移行し、給与が高めの従業員がヤマダホールディングスに多く所属することになったからだ。
そのため、ヤマダ電機とビックカメラの平均年収を公平に比較するのであれば、2020年までの平均年収で比較するべきだ。そして実際に比較すると、2011年から2020年にかけて、10年連続でビックカメラの勝利となっている。
「売上高の高さ=平均年収の高さ」ではないことも
今回の分析から言えることは、売上高ではライバル企業に勝っていても、平均年収では負けていることがあるということだ。どうしてこうした「逆転現象」が起きているかだが、それはケースバイケースだ。
例えば、優秀な人材をライバル企業に奪われないために、従業員の給与を高めに設定するケースがある。そうすれば新卒人材などの応募がライバル企業より多くなり、多くの応募者の中からより優秀な人を選ぶことができる。
また、売上高が高くても利益率が低く、従業員に多くの給与を支払うことができないケースがある。ただし、ヤマダホールディングスとビックカメラの場合は、このケースはあてはまらない。純利益率はヤマダホールディングスの方がわずかに上だからだ。
こう考えると、ビックカメラはヤマダに人材面で負けないよう、あえて従業員に多くの給与を支払っているのかもしれない。真偽のほどは分からないが、一つの可能性として挙げられる。
「売上高」にとらわれずに企業分析を
いずれにしても、売上高で勝っているからといって、平均年収も高いと安易に結びつけるのはよそう。
特に転職を検討している人は、その企業が上場企業であれば有価証券報告書をしっかりチェックしたい。売上高が少ないことで応募の候補に入れていなかった企業が、思わぬ優良企業であることが発覚するかもしれない。
文・岡本一道(経済ジャーナリスト)
編集・dメニューマネー編集部
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