「お金持ちはケチ(だからお金持ちになれた)」という意見を見かけることがあります。しかし、それは本当なのでしょうか。
筆者は「東京の私立御三家幼稚園→私立御三家小学校→以後大学までエスカレーター進学」という典型的なお受験ルートを通ってきたため、幼少期からたくさんの富裕層を見てきました。また、大学卒業後は野村證券の営業マンとして、現在はファイナンシャル・プランナーとして、多くの富裕層を見てきました(延べ1,000名以上)。
お金持ちは星の数ほど存在するため、二元論で論じることはできませんが、そんな筆者からすると、やや違和感がある意見です。今回は、「お金持ちはケチなのか」について考察していきます。
「お金持ちはケチ」なのか?
まずは「ケチ」の言葉の定義を確認してみましょう。
「ケチ(けち)」を広辞苑で検索すると、いくつか意味がありますが、最も論点に近いのは「③金品を必要以上に惜しむこと。しみったれなこと。また、その人。吝嗇(りんしょく)」という行でしょう。
「お金持ちはケチ」なのでしょうか。
結論から言えば、筆者は「違う(ケチではない)」と思っています。むしろお金持ちは、気前よく支払う人が多い印象です。なぜ気前よく支払う人が多いのでしょうか。いくつかの要因が想定されます。
まず、保有資産が大きいため、相当高額なものでない限り、資産の毀損インパクトが小さいことが挙げられます。例えば10億円の資産がある人にとって、100万円は資産額の0.1%ですので、極論すれば100万円の毀損は誤差の範囲内です。一方、資産500万円の人にとって100万円の毀損は大きな話でしょう。
また、富裕層は社会的地位が高かったり、所得が高かったりするので、支払い関係で余計な時間を使ったり、頭の容量を使ったりしたくないということが挙げられます。少額のことで時間やエネルギーを取られるよりも、仕事に集中して、もっと稼げば良いという考え方です。
なぜ巷では「お金持ちはケチ」と言われることがあるのか
それでは、なぜ巷では「お金持ちはケチ」と言われることがあるのでしょうか。こちらもいくつかの要因が想定されます。
まず、お金持ちは「買おうと思えば買えるけど買わない」人が多いことが挙げられます。例えば、富裕層がプリウスに乗っていたら、「プリウスなんかに乗っていないで、フェラーリやポルシェに乗れば良いのに。ケチケチしやがって」と思う人もいるでしょう(トヨタ関係者の皆様、申し訳ありません)。
しかし、富裕層本人からすると「プリウスで十分」と感じているのです。一般的に、「買おうと思えば買える立場」になると、そこまで物欲が湧かないものです。これはそのような立場にならないと分からない感覚なのかもしれません。
一般人が持つ「富裕層のあるべき消費姿勢」の押し付けとも言えます。富裕層であっても、全ての分野においてハイクオリティなものを利用していたり、身に着けていたりするわけではありません。考えてみれば当然のことですが、少なくとも一定の分野においては、一般人と同じ消費感覚を持つ人が多いわけです。
また、富裕層は一般的に消費に対する「費用対効果」の目が厳しいことが挙げられます。多くの富裕層はビジネスの世界でバリバリ活躍している人ですので、その感覚が消費行動にも如実に現れます。
したがって、費用対効果のハードルをクリアしているものは何の文句も言わずに快く支払いますが、ハードルをクリアできていないものはバッサリと切り捨てられます。その「バッサリと切り捨てられた人々」の声が「お金持ちはケチ」と広がっているのかもしれません。
富裕層と一口で言っても様々な人がいる
ここまで、「お金持ちはケチなのか」について考察してきました。前述の通り、筆者は違う(ケチではない)と思っています。しかし本稿は、これまで筆者が接してきた富裕層の言動を主観で判断しているため、全ての富裕層に当てはまるとは限りません。
富裕層と一口で言っても、1代で成り上がった「セルフメイドリッチ」と、生まれたときから裕福で資産を引き継いだ「バトンタッチリッチ」では消費感覚が大きく異なるでしょう。今後もこのような富裕層の都市伝説について論じる予定です。ご期待下さい。
文・菅野陽平(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
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