「生活費が苦しい」とiDeCo(イデコ)の掛け金を減らすと、当然ながら節税効果が薄くなってしまうかもしれないが、苦しい思いをしてまで掛け金を維持すべきとも限らない。もし掛け金を減らすなら、どんなデメリット、影響があるのかよく考えてからにしたほうがいいだろう。そもそもイデコには、入ると損をしてしまう場合もある。自分がそれに当てはまらないかどうか、確かめてみてはいかがだろうか。
「イデコの掛け金を減らしたい」人が知らないと困る注意点
物価高で生活費のやり繰りが厳しくても、毎月払うイデコの掛金を減らせば、手取りが増えて生活が楽になるかもしれない。しかし、よく考えずに掛金を減らすとあとで困ることがある。
節税効果がなくなる分だけ税金が増える
掛金を月1万円、年12万円減らしても、生活資金が12万円増えるわけではない。掛金が減ると節税効果が減り、12月の年末調整で引かれる税金が増えるからだ。
年収300万円で税率15%(所得税5%+住民税10%)の人なら、12万円を払えば得られた節税効果1.8万円(12万円×15%)がなくなる。税金が1.8万円増える結果、実際には12万円ではなく10万円ほどしか手取りは増えない。
掛金の変更は何度もできるわけではない
イデコの掛金額は最低5,000円なので、それ以上の額を払っているなら減額できる。しかし、掛金の変更ができるのは1年に1回だ。
「とりあえず今月少し減らして、生活が厳しければ来月さらに減らそう」といったことはできない。無計画に掛金を減らすと後で困るので、よく考えてから手続きをしよう。
掛金の拠出自体をやめることも可能だ。しかし、それまで積み立てた掛金は原則60歳まで引き出せないので、生活資金として使えない。
イデコに入っちゃダメな人の共通点
老後資金づくりの方法として推奨されることが多いイデコだが、なかには「加入すべきではない人」もいる。加入すべきではない人の共通点として、次のようなものが挙げられる。
貯金がない(少ない)人
イデコの最大のデメリットは、原則として60歳になるまで拠出した(積み立てた)お金を引き出せないことだ。引き出すためには、「国民年金の保険料免除者になる」などの一定の要件を全て満たした場合に限られる。当然、「今月の生活費がちょっと苦しいから、5万円だけ引き出そう」はできない。
貯金がない(もしくは少ない)という人は、60歳以降の老後資金の準備も重要だが、「いま」の生活費や緊急時に使えるお金を確保することのほうが優先順位は高いと言いえる。貯金がない人は病気や怪我など急な出費に備えて、生活費の3ヵ月分は手元に用意しておきたい。
収入がない(少ない)人
イデコの大きなメリットのひとつが「所得税・住民税の節税になること」だ。確定拠出年金の掛金は、全額「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、課税所得額から差し引かれることで所得税・住民税が軽減される。
しかし言い換えれば、収入がない(もしくは少ない)人は、このメリットをほとんど享受できない。そのため、収入がない人はイデコへの加入は慎重に考えたほうが良いだろう。
文/編集・dメニューマネー編集部