iDeCo(イデコ)の加入者増加が止まりません。運営管理機関連絡協議会作成の確定拠出年金の統計資料によると、2021年7月時点の加入者は210万人を突破しました。2019年3月時点では約120万人、2020年3月時点では156万人、2021年3月時点では194万人でしたので、右肩上がりに増えていることが分かります。
老後資金づくりの方法として推奨されることが多いiDeCoですが、なかには「加入すべきではない人」もいます。今回は、iDeCoに加入すべきではない人の4つの共通点について解説していきます。
共通点1 貯金がない(少ない)人
iDeCoの最大のデメリットは、原則として60歳になるまで拠出した(積み立てた)お金を引き出せないことです。引き出すためには、「国民年金の保険料免除者になる」などの一定の要件を全て満たした場合に限られます。当然、「今月の生活費がちょっと苦しいから、5万円だけ引き出そう」はできません。
貯金がない(もしくは少ない)という人は、60歳以降の老後資金の準備も重要ですが、「いま」の生活費や緊急時に使えるお金を確保することのほうが優先順位は高いと言えます。貯金がない人は病気や怪我など急な出費に備えて、生活費の3ヶ月分は手元に用意しておきましょう。
共通点2 収入がない(少ない)人
iDeCoの大きなメリットのひとつが「所得税・住民税の節税になること」です。確定拠出年金の掛金は、全額「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、課税所得額から差し引かれることで所得税・住民税が軽減されます。
しかし言い換えれば、収入がない(もしくは少ない)人は、このメリットをほとんど享受することができません。そのため、収入がない人は、iDeCoへの加入は慎重に考えたほうが良いでしょう。
「本来20.315%が取られる運用益への税金が非課税になるメリット」などは享受できますが、「所得税・住民税の節税メリット」と違い、運用が必ず成功する保証はありません。また、元本確保型などのリスクが低い商品を選んでしまうと、手数料負け(手数料が運用リターンを上回ること)にもなりかねません。
どうしてもiDeCoを利用したい場合は、「運用益が非課税になり、老後資金を長期で運用できる場所」と割り切って、株式などのリスク資産で運用するのが良いでしょう。ただし、元本割れリスクがあることには注意が必要です。また、受給時に税金がかかってしまうことも抑えておきたいところです。
共通点3 専業主婦(夫)になる予定がある人
「今は収入があるが、近々専業主婦(夫)になる予定の人」も注意が必要です。専業主婦(夫)になると、基本的に収入はゼロになるため、2番と同様に「所得税・住民税の節税メリット」を享受することができません。3番の人は「2番の予備軍」とも言えます。iDeCoの加入は慎重に考えたほうが良いでしょう。
共通点4 転職や独立する予定の人
転職や独立をする予定がある人は、まずは新しい挑戦に集中したほうが良いでしょう。特に独立する場合は、始めるビジネスの種類にもよりますが、手元に資金があればあるほど望ましいと言えます。転職・独立すると、拠出金額を変更したり、事務手続きをしないといけなかったりするため、そちらに余計なエネルギーがかかってしまうこともおすすめしない理由のひとつです。
もちろん、なるべく早く始めたほうが積み立てる金額も増えますし、複利効果も効くのは間違いないのですが、新しいチャレンジが軌道に乗るか分からない以上、生活が落ち着いてきてから、改めて加入を考えても遅くはないはずです。なお、iDeCoの最大月額掛金は自営業者の6万8,000円(年間81万6,000円)ですので、仮に1年間拠出しなかったとしても、老後生活が破綻してしまうような金額(機会損失)ではありません。
「一般労働者の老後資金づくりの方法」としてはメリットの多い制度だが・・
ここまで、iDeCoに加入すべきではない人の4つの共通点について解説してきました。iDeCoは、「一般労働者の老後資金づくりの方法」としてはメリットの多い制度で、私もよく相談者に提案しています。特に高所得者であればあるほど効果的です。
しかし、iDeCoに加入すべきではない(=加入してもメリットが薄い)人もいます。加入を検討している人は、自分に当てはまる共通点はないか、事前に確認したうえで加入することをおすすめします。
文・菅野陽平(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
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(2021年9月23日公開記事)