2ちゃんねるの創設者という経歴、肩書きが不要なほど知られる存在となった、ひろゆきこと西村博之氏。『1%の努力』(ダイヤモンド社)をはじめとした著書はもとより、TwitterやYouTubeなどでの発言も常に注目を集めている。氏の姿勢は賛否分かれるものが少なくないが、くどくど説明しない、短い発言には、多くの人が「耳にしたくない」真実が含まれているように思われる。コロナ禍で社会が、働き方が、生活が大きく変わった。新たに迎えた2022年をよりよい1年にするためのヒントを(ファンもアンチも)見つけて欲しい(インタビューは21年12月上旬に行われました)。(聞き手:濱田 優・dメニューマネー編集長)
ひろゆきが「日本で不動産を買う」のに否定的な理由
コロナ禍が拡大するより前、2015年にフランス・パリに移住したひろゆき氏。あらゆるメディアを通じて日本にメッセージを届け続けている。日本とフランスなど海外を比べて感じる、お金に対するスタンスや付き合い方、考え方の違いについて聞いた。
納税者としての意識の違い?なぜ日本は「生活保護」受給者が少ないのか
──ひろゆきさんは海外に移住されて長いと思いますが、日本と海外、特にフランスを比べてお金の付き合い方の違いや傾向は感じていますか?
フランスのほうが「お金がなくてもなんとかなるだろう」と考えてる人が多い気がしますね。「文句言えば国がお金を出すだろう」「権利だから当然でしょ」と思っている割合が高い。お金持ちがめちゃくちゃ納税してることもあってか、叩けば出てくる“打ち出の小槌”くらいに考えてる節がありますね。
たとえばアメリカだと、政治家が政府予算のことを“Your Money”って言い方をするんですよね。政府の予算は国民の税金で成り立っているので、「税金というあなたが払ったお金のおかげで(いろんな政策ができるんで)すよ」という考え方ですよね。
その点、日本の場合ってもともと自助努力というか、基本的に「(お金のことは)自分で頑張るもの」と考えがちじゃないですか。納めた税金にしたって、「政府という自分たちとは別の存在のものになる」という意識が強い。だから、「政府さん、お金をください」とお願いするし、くれたら「ありがとうございます」っていう感じになっちゃってますよね。
──著書でも日本が生活保護の受給者が少ないと指摘されていましたが、そういう考えがあるからなのでしょうか。
権利というものをどう考えるかとか、常識とされることの違いはありますね。日本は「働かないでお金をもらうのが忍びない」という考えの割合が、ほかの国より高いのかなって気がします。
日本で庶民が不動産を買うのはヤバい?
──投資や資産運用に対する考え方、特に老後の生活への備えという点で、日本と外国の違いは何か感じられますか?
フランスは「老後のためにお金を貯めよう」みたいな考えをする割合はだいぶ低い気がします。
──結局、「最終的には国がなんとかしてくれる」と考えているからでしょうか。
それもあるし、目の前のバカンスを楽しむほうがいいよねと。そんなにお金持ってない人でも、小銭があったら「1ヵ月くらい休んで楽しもう。またその後働けばいいでしょ」みたいに考えるんですよ。
──日本だとちょっとお金がたまっても「老後のためにとっておこう」ってなりますね。
たとえば日本だと、庶民の人生で1番大きな買い物って「住宅」だと思うんですね。日本の不動産って、たとえば庶民が買う5000万円以下くらいのマンションって、30年とか40年たったら価格が半分とかに下がってもおかしくないわけですよ。4000万円で買ったけど30年後に2000万円、半額になりましたみたいな。
その点、パリで不動産を買うとそんなことはないんですよ。それこそ、この150年で不動産の価格が下がったのって3〜4年分ぐらいしかない。テロがあった時と、コロナでちょっと下がったぐらいで、基本的には価格はずっと上がり続けてる。パリでアパートを買って30年住んでも価格はめっちゃ上がってますっていう感じなんですよ。
──なるほど。いまコロナ禍のお話がありましたが、この間、社会がどう変わったと感じられますか?
金持ちはすごくお金持ちになって、働いて稼がなきゃいけない人ほどキツくなった。その差が大分広まったなと感じますね。
株高になって「株買えば儲かるかも」って皆が投資して、さらに株式市場にお金が集まって、バブル的に株価が上がった。もともと投資していた金持ちはそのおかげでさらに儲かってますよね。逆に、投資するお金のない人たちは仕事が減ってたり、売上が下がったりして苦しくなってる。
コロナ禍のせいで生活で変わったことは「特にない」
──あしもとコロナウイルスの感染状況、パリの生活はどういう感じなのでしょうか。
1日の感染者が5万人とかいるんですけど、普通にみんな外を歩いてますし、外に行く時もマスクをつけてる割合が3割ぐらいじゃないですかね。オミクロン株の陽性者も二十数人いるし、時間の問題で広がるんじゃないですか。
──日本の感染者はかなり少ないですし、オミクロン陽性者も数人ですがかなり騒がれています。2021年振り返った時に、ひろゆきさんの生活で何か大きく変わったことってありますか?
特にないっすね。もともとあんまり外に出ないので……外に出ないことが正当化されたのは、ある意味良かったです。
もともとリモートな生活をしていたので、みんながリモート慣れしてくれて、そういう意味で仕事はしやすくなった気がします。
──2022年以降、経済、ビジネスやマネーの分野でどんな変化が起きそうとか、こんな傾向が強まりそう、ということってありますか?
リモートに適応してない会社の淘汰が始まる気がしますね。たとえば出社や出張しないと仕事が終わらない会社とか。逆にリモートに適応して出社や出張が要らなくなった会社はその分、コストがかからないわけじゃないですか。
最近人手不足な中で、若い人は出社したり、飲み会があったりする会社よりリモートで楽に働ける会社のほうがいいって考えますから、そういうところに優秀な人が集まるでしょう。
あとコロナの貸付金の返済を返済しなきゃいけなくなるんですよ。コロナ禍の最中って割と銀行がお金を貸してくれたし、利子は国が払うという形でしたけど、その返済期限がきちゃうと、「返せません」「払えません」っていう会社が出てきて、多分連鎖するんじゃないかなと思います。
ただ参議院選もあるので、返済期限を延期、先延ばしにするかもしれませんが、そのあたりは政局次第ですが、とはいえどこかのタイミングで返済という形にしないといけない。それが来年か再来年かにくるんだろうなとは思います。
取材/構成・濱田 優(dメニューマネー編集長)
ひろゆき氏の新春インタビュー 全5回公開予定
・「日本で不動産を買う」のに否定的な理由(本記事)
・「投資のアドバイス」を求められたらどう答える?日本の婚姻率を上げるには(fuelle)
・「新卒はすぐ会社を辞めるな」というのはなぜ?仮想通貨の投資はどう考えるか(MONEY TIMES)
・どうでもいい大学は潰したほうがいい
・「宝くじを買うこと」を問題視した本当の理由
ひろゆき(西村博之)
1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学へと進学。在学中に、アメリカ・アーカンソー州に留学。1999年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。2005年、株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任し、「ニコニコ動画」を開始。2009年に「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。2019年、「ペンギン村」をリリース。主な著書に、『1%の努力』(ダイヤモンド社)、『論破力』(朝日新書)、『誰も教えてくれない日本の不都合な現実』(きずな出版)などがある。
(2022年1月1日公開記事)