2022年4月から、高校の家庭科で教える金融教育の内容が拡充されます。これに先立ち、金融庁からは教材が公表されています。お金のプロである銀行員としてこの教材を読むと、「高校生だけに読ませておくのはもったいない、とても良くできた教材だ」と感じました。大人こそこの教材で金融リテラシーを身につける必要があると思う理由が3つあります。
理由その1 金融リテラシーの第一歩「手取り収入の把握」がしっかり明示されている
金融リテラシーで最も大切なのは、投資のテクニックではなく「収入と支出の把握」です。
私たちは税金や社会保険料を支払っていますが、こうした費用が給料から天引きされるサラリーマンは、とりあけ負担に鈍感になりがちです。しかし、教材ではこうしたコストを把握する重要性を説いています。
銀行員として多くの人と接すると、金融リテラシーが高い人ほど税や社会保険料に対する関心が高いと感じます。自分が納めた税金がどのように社会に還元されるか関心を持つことで、自分のお金の使い方も変わるはずです。
その2 分散投資と積立投資こそ資産運用の王道であることも説明されている
投資の基本は分散投資と積立投資です。投資期間が長ければ長いほど、分散投資と積立投資の効果は大きくなります。こうした投資の基本的なスタンスについて教材は分かりやすく説明しています。
資産運用に携わる銀行員はよく、「一番儲かるものを教えて欲しい」と聞かれますが、そんな質問に答えられるはずはありません。人それぞれに取れるリスクも、目指すリターンも異なります。将来の相場を言い当てることなどできるはずがありません。
その3 マネー雑誌が教えない現代社会のリスクにも触れられている
この教材には、現在の社会情勢がしっかりと反映されていて、詐欺や多重債務、金融商品をめぐるトラブルや、暗号資産について説明されており、十分に実生活で通用する内容になっています。
金融トラブルに巻き込まれる人の多くは、自分がトラブルに巻き込まれていると認識していません。また、誰にも相談できず泣き寝入りする人もいます。本当に必要な金融リテラシーはこうしたリスクに対する対処方法なのです。
筆者は今回の、高校での金融教育の内容拡充に疑問を抱いていました。しかし、この教材を読み、改めて金融教育の必要性を認識させられました。投資で多くのリターンを得るノウハウを身につけることが金融教育ではないのです。高校生はもちろん、実際に投資や運用をする大人こそ、金融教育が必要であると感じさせられました。
文・高村阿木夫(現役銀行員のマネーライター)
編集・dメニューマネー編集部
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