生命保険大手の日本生命保険が4月から、企業年金の予定利率を1.25%から0.5%へ引き下げる。これによって企業年金の満額保証タイプの「確定給付型」の予定利率が下がることになる。大手企業に勤務している会社員は注意が必要だ。
引き下げ部分は年金の3階建て部分
最初に日本の年金制度を確認する。公的年金は2階建てとなっている。1階の基礎部分は国民(日本に住む20歳から59歳までの人)が義務で加入する国民年金(基礎年金)である。40年間すべて納入すれば、65歳から一律月額約6万5,000円の満額を受け取ることができる。
会社員の場合、会社で加入している厚生年金が公的年金の2階部分となる。会社が半分負担してくれるメリットがある。契約している期間や給与により払込額は変わり、受け取り額は人によって異なる。
公的年金を補うために、3階部分として企業が任意で設立し、個人が任意で加入できる制度が企業年金だ。企業年金には将来受け取る満期額が決まっている「確定給付型」と、払い込む金額は決まっているが運用次第で受け取り額が変わる「確定拠出型」がある。
かつては「確定給付型」しかなかったが、運用次第で結果が変わる「確定拠出型」が主流になりつつある。今回引き下げとなるのは、企業年金の満額保証タイプの「確定給付型」の予定利率だ。
低金利で運用が難しくなったことが背景
予定利率が下がるということは年金の満期時の満額保証の受け取り金額が下がると言うことだ、複利なので少しの下げでも効果は大きい。
「確定給付型」なので本来は満期時の金額は決まっているはずだ。90年代初までの予定利率は5.5%だった。市場金利が下がり運用難になったためその後4回下げ2001年に1.25%となった。今回の引き下げは21年ぶりだ。
日本では2006年以降ゼロ金利政策をとっており、コロナショック後世界の多くの国がゼロ金利となった。ゼロ金利では1.25%の予定利回りを保証するのは難しい。
逆ざやで赤字になるため、保険会社は1.25%での新規契約を止めている状態だった。今回の見直しでは、予定利率が0.5%で新規契約の受け入れを再開するだけでなく、既存の契約についても見直しをすることまで踏み込んだ。
実は大手生保4社では、日本生命に先行して第一生命が2021年11月に1.25%から0.25%に下げている。明治安田生命、住友生命は当面1.25%を維持する方針だが、追随せざるを得ないとの見方が多い。
既存契約を見直すようだと、企業年金を委託している企業の多くが満期時の金額の見直しもしくは掛金の積み増しを検討せざるを得ないとしている。
企業年金を受託しているのは、生保だけでなく信託銀行などもある。企業年金の受託のシェアが変動することがありうる。
また、企業年金の「確定拠出型」への移行が加速する可能性がある。生保の運用方針がよりリスクをとり運用結果を重視する方向へ進む可能性もあるだろう。
文/編集・dメニューマネー編集部
【関連記事】
・ガソリン以外も!ウクライナ情勢「値上げ」されるモノ3選
・初心者向け!ネット証券オススメランキング(外部サイト)
・これが「老後破産」の前兆!知っておくべき「NG行為」
・SBI証券と楽天証券どちらで開設する?徹底比較(外部サイト)
・貯金1000万円ためる人が「絶対にやらない」4つのこと