建設現場などで働く労働者、職人をターゲットにした作業服や軍手などで知られるワークマン <7564> が「4,900円」の衝撃プライスでテントを発売。本格的にキャンプ市場に参入した。人気のスノーピーク <7816> とは一桁違う価格設定だ。アウトドアウェアで成功したとは言え、作業服を強みとするワークマンに勝機はあるのか？

2月に発表したテントは完売

2022年2月22日。ワークマンは「キャンプギア＆春夏新製品」の発表会を関係者向けに行った。1人向けテントは4,900円（税込み、以下同）。スノーピークは幅広い商品があるため単純比較しても意味はないが、売れ筋のソロテントは4〜5万円であり一桁違う。

ワークマンの本気度は、テント初心者が必要とする130商品をラインアップしたことで伝わってくる。テント4,900円、シュラフ1,500円、ランタン780円、テーブル980円、チェア1,780円などを揃えても1万円以下だ。

ワークマンはアウトドアウェアで機能的で安価な商品を提供し、実績と信頼を積んできた。アウトドアウェア売上は、2019年度の71億円から2021年度は271億円へ約4倍となり、株式市場でも人気化した。アウトドアウェアの撥水・防火・防虫・保温・吸湿などの機能をキャンプ用品にも導入する。

オンラインショップでみると、ソロテントから1万7,800円の4人用テントまでテントは全て完売して入荷待ちだ。

キャンプ市場への参入理由は成長性

ワークマンは「ワークマンプラス」や「ワークマン女子」などのヒットで、2020年3月期は売上38％増の1,058億円、営業利益42％増の191億円と急成長した。2021年3月期は売上14％増の1,058億円、営業利益25％増の239億円。2022年3月期予想は売上8％増の1,144億円、営業利益11％増の266億円。最高益は更新中だが減速傾向だ。

これを打開するためにキャンプ市場への参入だ。初年度の売上を40億円と見込んでいる。生産体制は55億円まで増産できる体制を構築済だ。機能製品ではアウトドアウェアとシナジーが効くので横の展開ができる。

マーケティング手法も珍しく、基本はウェブ販売のみ。キャンプ用品は展示場所も必要で専門的な質問にも答えるリソースを割くよりもウェブ販売に特化することで安価で提供する狙いがある。自宅配送もせず、近くのワークマンで受け取ってもらうことでワークマンにとってもユーザーにとってもコスト削減ができるというわけだ。

広告宣伝はアンバサダーマーケティングに特化した。ワークマンが認定したインフルエンサーなどのアンバサダーに、商品を無料で提供し、使用レポートや動画を上げてもらう。アンバサダーは無報酬だ。

ただ、いち早く新商品を体験できて、ワークマンのサイトから視聴者を誘導できるメリットがある。広告宣伝費は節約できて、店舗投資も最小限ですむ。アンバサダーを使ったマーケティングはすでにワークマンプラスなどで実証済だ。

スノーピークとは市場が違うだけにどちらにもメリット？

同じテント領域でもエントリー層を狙ったワークマンは、スノーピークと狙うターゲットが異なる。初めてキャンプをする家族など、それほど予算をつぎ込めない層を狙っている。

世界的にキャンプ市場は成長市場だ。市場拡大のためスノーピークもエントリー向けの製品に力を入れている。

ワークマンから入った新キャンパーが1点ずつスノーピークを買いそろえて行く。逆にスノーピークを使っているベテランが機能的には問題ないワークマンを新人に勧めることもあるだろう。

ワークマンが狙うのは中国系のテントメーカーなどが持っている市場だ。両方にメリットがある可能性も高そうだ。

文/編集・dメニューマネー編集部
画像・一人用・BASIC ドームテント（画像=ワークマンWebサイトより）

（2022年4月18日公開記事）

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