若者のテレビ離れが進んでいると言われるが、テレビ局の業績は好調だ。
在京の民放キー局は各社とも今期大幅増益予想で、特にテレビ東京 <9413> とテレビ朝日 <9409> は営業利益で過去最高を更新する見込みだ。視聴率で広告収入を増やす戦略から、コンテンツ販売、配信へとビジネスモデルのシフトが進みつつある。テレ東の決算からその流れを見ていきたい。
若者の半分はテレビを見ないが「見逃し配信」でドラマは見ている
若者はどれくらいテレビを見ないのだろうか。
16~19歳で1日にテレビを見る人の比率は47%、20代も51%にとどまる(NHK放送文化研究所が21年5月に発表した「国民生活時間調査2020」による)。
インターネット利用はそれぞれ80%、73%。若者のテレビ離れは進んでいる。ゴールデンタイムのテレビ視聴率は97年度下期の71.2%から21年度年上期の58.8%までほぼ一貫して下げている。
ただ、ドラマはコンテンツとして若者にも人気があり、TVerでの「見逃し配信」が急増している。TVerは、在京民放キー5局と、在阪民放5局、広告代理店4社が共同出資した動画配信のプラットフォームである。
2021年12月の月間動画再生数は前年同月比1.8倍の2億1,355万回と過去最高を記録した。TVerでは今までドラマの放映後終了後から“見逃し配信”していたのを、4月11日からはリアルタイム配信をスタートしており、今後さらに利用者は増えそうだ。
コンテンツ収入のライツ事業が過去最高益に
テレビ東京の2022年3月期営業利益は53%増の80億円で、2018年3月期の74億円の過去最高益を4年ぶりに更新する見込みだ。2021年5月時点での予想55億円を8月に60億円、11月に70億円、2022年2月に80億円とすでに3度、期を追う毎に上方修正している。
好調をささえているのは「ライツ事業」だ。
主力事業である地上波放送事業は、「放送事業」と「ライツ事業」に分かれる。
「放送事業」はタイムやスポットなどスポンサーからの広告収入。「ライツ事業」はテレビ東京が持つコンテンツからの収入だ。アニメの放映権やグッズ販売、自社制作番組の配信などだ。アニメは「NARUTO」など海外向けの販売が好調。配信は、TVer、プライムビデオ、Netflix、パラビなど向けの配信が好調。人気シリーズ「孤独のグルメ」の再生回数増などが収益に貢献している。
発表済みの2022年度第3四半期(4〜12月)までの決算では、営業利益が66%増の76億円と同期間での過去最高だった。主力の地上波放送事業で、放送事業における粗利は15%増の180億円、ライツ事業の粗利は28%増の93億円。まだまだライツ事業の比率は低い。
しかし、粗利率は放送事業が29%、ライツ事業が49%と採算はライツ事業が大きく上回る。ライツ事業の伸びが過去最高益に貢献している。
テレ東の成長ドライバーは「アニメ」 この10年で粗利益7倍増
テレビ東京は2021年に作成した中期経営計画で、ライツ事業へのビジネスモデルシフトを明確にした。アニメは、ここ10年で粗利益を7倍近く増やしている。中国での制作体制を構築済み、今後は欧米や中東、中南米向けを強化する。
配信では、「全コンテンツ・全配信」の方針をかかげており、放送の同時配信加速する。2022年3月期の第3四半期時点でライツ事業が全体の粗利に占める比率は27%。2024年3月期には5割増で40%まで増やす方針だ。同社にはもともと在京の民放の中でも製作費が限られているとされ、かえって独創的なコンテンツを次々と産み続けた経緯もある。
オワコンと言われつつあるテレビ業界で気を吐くテレ東の今後に注目しておきたい。
文/編集・dメニューマネー編集部
画像・テレビ東京Webサイトより
(2022年5月6日公開記事)
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