コロナ禍で店舗数を急激に伸ばしてきた「唐揚げ専門店」の閉店が目立ってきた。タピオカブーム終えんの再来との指摘も出てきている。閉店の理由に迫る。
どのお店も金賞が受賞できる?行き過ぎたブーム
アークランドサービスが2014年に「からやま」、すかいらーくホールディングス <3197> が17年に「から好し」、ワタミが18年に「から揚げの天才」で参入、市場が一気に拡大。さらにコロナ禍でブームは加速した。
唐揚げ専門店の出店が加速した背景には、初期投資が低く参入しやすい点、比較的簡単においしい味を提供できる点、小さいスペースでも稼働可能という点などが挙げられる。コロナ禍でスーパーやコンビニの惣菜からシェアを奪って成長してきた。
日本唐揚協会が発表した店舗数は、全国で推定4379店舗(2022年4月現在)。1年で1256店舗増え(約40%増)、2012年の450店舗から10年で約10倍となったという。
しかし、アフターコロナで、デリバリーやテイクアウト需要が伸び悩めば停滞する可能性がある。
実際、外食の他業態に比べれば高い伸びではあるが、市場は確実にスローダウンしてきている。
マーケット調査会社の富士経済によると、から揚げ専門店市場は、コロナ前の2019年の約850億円で1,700店舗から、2020年には約1,050億円(24%増)で約2,300店(35%増)に急拡大。2021年には約1,200億円(14%増)で約3,100店(35%増)まで拡大した。2022年は8%増の1,300億円市場を予想している。
「からあげグランプリ」金賞受賞の企業が多い説
店舗が増え市場規模が大きくなり、「からあげグランプリ」の金賞受賞を実績として店頭に掲げるお店も目立つ。
だがこのグランプリには、参加したお店の多くが金賞を受賞しており、ネット上では「お金を払えば受賞できる」とはやし立てる声もある。
もちろんそんなことはないのだが、からあげグランプリにはさまざまな部門があり、それぞれで金賞が多数誕生しているのはたしかだ。
たとえば2022年4月に結果が発表された第13回からあげグランプリの結果は、エントリー総数136社、ノミネート(試食審査進出)82社で、最高金賞・金賞40社、特別賞18社だった。
エントリーした会社の3分の1、ノミネートされた会社の半分が金賞(最高金賞含む)をとっている。
さらに受賞した企業が多数出店すれば、各店舗が「金賞受賞」をうたうため、どうしても金賞受賞店が多く見えるという背景もあるだろう
ただこうした行き過ぎたブームにも陰りが見えてきた。
唐揚げブーム終えんの理由とは?
唐揚げ専門店市場は伸び率が鈍化しており、レッドオーシャンでの競争激化で収益悪化懸念から閉店する店舗も目立ってきた。閉店するのは基本的に売上、利益が上がらない店舗だ。
ワタミ <7522> が運営している「から揚げの天才」は、テリー伊藤がプロデュースするから揚げと卵焼きをウリに2018年11月に1号店を出店。コロナ禍の需要を取り込むために出店攻勢をかけた。2年7ヵ月後の21年7月に100店舗を達成。外食業界では100店舗達成の最速記録だった。
2021年9月末に110店に達したが、その後閉店が増え3月1日時点の店舗数は106店と減少している。
とんかつ専門店「かつや」を展開するアークランドサービスホールディングス <3085> は、「からやま」「からあげ縁」の2ブランドを展開している。2ブランドの3月末の店舗数は167店。12月末の177店舗から減少している。売上も鈍化傾向にある。「からやま」の2021年12月期売上高は0.2%増とわずかに伸びたが、8月以降12月までは前年同月比割れだった。
さらには原材料高の向かい風も吹く。原材料、燃料、物流チェーンのコスト高などインフレ、円安が店舗の収益を圧迫するだろう。鶏卵、油、パン粉なども値上げが続く。
もっとも、唐揚げは子どもから大人まで顧客層が幅広く、それこそ「嫌い」という人に出会わないほど人気といって差し支えないだろう。アフターコロナでも一定のテイクアウトとデリバリー需要は高水準が続く可能性も高い。
から揚げの天才では、から揚げにこだわらず弁当にも力を入れていく方針だ。今後も唐揚げ専門店の動向を見守りたい。
文/編集/写真・dメニューマネー編集部
(2022年5月8日公開記事)
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