東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド <4661> が4〜6月期として3年ぶりの黒字に転じた。同社が4月に示した「入園者数を制限し、顧客の満足度を上げる」という大きな方針転換の足元の成果と決算発表を受けた株式市場の反応を紹介する。

入園者数制限で3年ぶりの黒字復活！株式市場はポジティブな反応

2022年3月期第1四半期決算が7月28日に発表され、営業利益が170億円となり、前年同期88億円の赤字から黒字転換した。入場者数とゲスト一人あたり売上高の増加を好感し、翌29日には5月2日以来の2万円台を回復し、安値から20％ほど戻した。

4月27日に発表された2021年3月期決算及び新中期経営計画で入園者数制限の方針が示された際、株式市場はネガティブ材料視した。

決算自体は最終利益58億円の赤字予想から一転して80億円の黒字、2023年3月期は4.4倍の352億円に急拡大する明るい内容だった。それにも関わらず、4月28日の株価は10％安と急落した。

アナリストは、オリエンタルランドを“アフターコロナ関連の筆頭銘柄”として位置づけている。経済再開で利益は急回復すると期待していたが、中期経営計画で回復スピードが低いことから、市場の反応はネガティブだった。7営業日で24％も下げた。

ただ、説明会やメディアで新戦略への理解が広まったため、株価は5月12日の1万6,670円で安値を付け反発に転じた。

そもそも入園者数の上限を引き下げた理由とは？

オリエンタルランドが新型コロナの感染拡大で大きなピンチを迎えたのは間違いない。

2021年3月期の最終利益は1996年の上場以来初となる541億円の赤字だった。年間入園者数は756万人とディズニーランドが開園した1983年の993万人をも下回った。

しかし、来場人数制限中は顧客の満足度が上がり、混雑がないためゲストに時間的余裕が増え商品購入や飲食に使う支出が増えたのだ。

従来のTDRは巨額の投資で新エリアや新アトラクションを開発し、入園者数を増やすことで成長してきた。

ただ、日本の人口は減少に転じている。コロナや気候変動でインバウンドの行動も変化する可能性がある。労働人口の減少、人件費上昇でキャストの採用も容易ではない。開発費・建築費⾼騰などで投資額は巨大化する。方向転換が必要な時期だった。

コロナ禍でゲストの満足度向上、一人当たりの売上増

4月に発表した「2024年中期経営計画」では、1日当たりの入園者数上限を引き下げ、多様化するゲストニーズを満たし、体験価値を上げることで収益を向上する戦略が示された。

中期経営計画では2024年度の入園者数は2,600万人を目標とした。コロナ前の2018年度の入園者数は過去最高の3,255万人だった。ピーク時より2割も低い目標だ。一方、ゲスト一人当たり売上⾼（入場料、飲食、商品などトータル）を23％増の14,500円とすることで採算を向上する。

一つの施策として、繁忙期と閑散期の入場料に価格変動性を導入する。現在の7,900円〜9,400円のレンジをさらに拡大する方針だ。また、園内で時間的余裕が生まれることでアルコール販売も伸ばす、チュロスやピザといった人気食品の冷蔵品販売も始めた。すべてはゲストのトータル支出を増やすためだ。

体験型・滞在型シフトを加速　2023年度には『ファンタジースプリングス』がオープン

2023年度に東京ディズニーシーに新エリア『ファンタジースプリングス』がオープンする。『アナと雪の女王』や『塔の上のラプンツェル』、『ピーター・パン』などの期待のアトラクションに加え、飲食施設、商品施設、高級価格帯のディズニーホテルなどの顧客満足度を高める魅力がふんだんに新設される、TDRでも過去最大の増設プロジェクトだ。

ホテルとの連携でリゾート全体での体験型、滞在型へのシフトを狙い、顧客満足度を高め、トータルの滞在支出を増やす契機になると期待されている。

投資家はオリエンタルランドの変化をポジティブに捉え直している。日本のサービス業が変化するためのアフターコロナの戦略としても注目されそうだ。

文/編集・dメニューマネー編集部
画像・ファンタジースプリングス（ ©Disney）

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