出前館が「赤字367億円」でも株価が好調な理由 ウーバーは黒字化、フードデリバリー業界のイマ

2022/08/03 07:00

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アフターコロナでフードデリバリー需要が想定より大きく減少している。出前館 <2484> の流通取引総額(GMV)は想定の3分の2にまで縮小、最終赤字は372億円に拡大する。一方、出前館の株価は堅調だ。宅配料理市場のイマをみていこう。 出前館のデリバリー需要は想定を1,100億円も下回る 出前館は7月15日に

アフターコロナでフードデリバリー需要が想定より大きく減少している。出前館 <2484> の流通取引総額(GMV)は想定の3分の2にまで縮小、最終赤字は372億円に拡大する。一方、出前館の株価は堅調だ。宅配料理市場のイマをみていこう。

出前館のデリバリー需要は想定を1,100億円も下回る

出前館は7月15日に2022年8月期の業績予想の修正を発表した。2021年10月時点では、新型コロナの状況次第で業績予想が難しいことから、流通取引総額(GMV)と営業利益予想だけを発表していた。

GMVの3,300億円を前提として、営業利益は500億円から550億円の赤字予想だった。今回の修正では営業利益は370億円の赤字と赤字幅が予想より縮小する上方修正だった。主に広告宣伝費が縮小した効果が大きい。しかし未発表だった経常利益は、前期の191億円の赤字から372億円の赤字に拡大する見込みだ。

予想外だったのは、GMVが想定の3,300億円から2,200億円に1,100億円も下方修正されたことだ。GMVは顧客が出前館を通じて注文した総額であり、デリバリー業界の重要業績評価指標(KPI)である。まん延防止等重点措置が全国的に解除となり、外食産業は回復が顕著でデリバリー需要が急減速しはじめた。

赤字発表後、出前館の株価が74%も上昇した理由

GMVの大幅下方修正だったのにもかかわらず、出前館の株価は驚くほど堅調だ。業績修正を行った7月15日を挟んで、7月13日から25日まで8連騰。7月14日の直近安値410円から、25日高値の713円まで74%も上昇した。

クレディスイス証券が22日に同社の格付けを「ニュートラル」から「アウトパフォーム」に格上げし、目標株価を760円から1,110円に上げたことも大きい。クレディスイスは、GMVの減速よりも、広告宣伝費の減少による赤字縮小で財務リスク顕在の懸念が遠のいたことを評価している。

株価はコロナ禍の2020年12月18日に4,200円の過去最高値を付け、コロナショック時の安値524円からウィズ・コロナ銘柄として8倍になった。その後、好環境下でも広告宣伝費の拡大で赤字が拡大していたことで、2022年6月20日には386円安値まで売られコロナの上昇分をすべて失っていた。

出前館の課題は収益化 米ウーバーは黒字化達成

フードデリバリー業界が赤字を垂れ流してきたのは、これがプラットフォーム・ビジネスであり、市場シェアを取ることが優先事項だったからだ。だから広告宣伝費を大量に投入してきた。

その結果、出前館はサービスを利用したユーザー数を表す「デイリー・アクティブ・ユーザー数(DAU)」で878万人を突破しており、競合6社におけるシェアは21年9月の26%から22年5月には49%に達した。DAUでもアプリのダウンロード数でもシェアトップだ。

一方、同社の課題が収益化にあることは明白だ。日本でも出前館などと競合している米ライドシェア最大手のウーバー・テクノロジーズは、米ウーバー・イーツ部門で2021年10〜12月期に初めて黒字化している(調整後EBITDAベース)。

市場が減速したと言ってもまだ35%と高い伸びである。コロナで生活形態が変化したこともあり、デリバリー需要が一気にマイナスになるとは考えにくい。シェア拡大のために投資した資金を回収できる時期にきているというのが株式市場の見方のようだ。

文/編集・dメニューマネー編集部

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