JT <2914> の「売り」が止まらない。株価は1年2ヵ月ぶりの安値をつけ、配当利回りは6.5%の高配当に。それでも底値が見えていないのは、JTのロシア事業分離による減配リスクが意識されているためだ。
実はJTの海外の稼ぎ頭はロシアにある。マクドナルドがロシア事業を売却するなど、グローバル企業のロシア離れが進むなか、世界のタバコ業界の現状も踏まえ、JTの今後の先行きを見ていこう。
高配当銘柄の人気に乗れないJT
日経平均は2022年8月8日に約2ヵ月ぶりの高値、2万8,279円をつけた。日本郵船 <9101> などの海運や日本製鐵 <5401> などの鉄鋼など高配当の内需セクターで人気化している銘柄が多い。
一方、JT <2914> の株価は配当利回りが6.5%あるにもかかわらず、8月4日に2,275.5円と1年2ヵ月ぶりの安値をつけた。
2期連続の「増収増益」見込みで業績は悪くない
業績自体は決して悪くない。
コロナ禍でもタバコの消費量にそれほど影響があるわけではないからだ。2021年12月期は売上11%増の2兆3,248億円、営業利益は6%増の4,990億円と増収増益で、2022年12月期も売上7%増の2兆4,860億円、営業利益10%増の5,490億円を見込んでいる。
タバコこの値上げと円安の進行で好調だ。売上・利益ともにコロナ前の2019年12月期水準を上回っている。
ロシア依存の高いJTは減配リスクが懸念されている
株価がさえないのはJTのロシア依存の高さにある。
JTはロシアのタバコ市場で4割弱を占めるシェアトップ企業である。ロシア事業は前期売上で約9%、営業利益で約17%を占める稼ぎ頭でもある。2022年1〜3月のタバコ販売数量はロシアが184億本と日本の145億本を上回る。
7月29日に行われた中間決算の説明会で、ロシアのウクライナ侵攻の長期化から、ロシア事業の分離を含めた選択肢を検討中とコメント。ビジネスに由来する損失は原則的に配当の算定に算入するとの考えを示した。
仮に撤退して利益が減るならば、減配する可能性が高いということだ。
引くに引けないロシア市場 JT以外の世界BIG3もロシア事業を継続
世界の大手たばこ企業は、米系のフィリップ・モリス・インターナショナル
タバコ業界にとって、ロシアは世界有数の大きな市場だ。市場シェアはJT、フィリップ モリス、ブリティッシュ・アメリカンの順である。
タバコ市場が縮小していく中で分離するには大きすぎる市場だ。大手でロシア事業の売却を決めたところはない。
フィリップ モリスも今年中の撤退はないとのコメントを残している。JTは4月の決算説明会でもロシア事業分離について話していたが進展していない。株価は各社とも低迷している。
しかし、ロシアは簡単に引くことができない市場だけに世間の反応を見ているのかもしれない。今後のJTの判断が気になるところだ。
文/編集・dメニューマネー編集部
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