エルメスや、シャネル、ルイ・ヴィトン──。こうしたブランドのバッグの中には、頑張れば富裕層でなくても手が届くものもありますが、富裕層は一点、数百万～数千万円もするようなバッグを躊躇せず購入しています。そこには、単に「買えるから」にとどまらない、いくつかの理由があります。

富裕層は「価値」を重視する

まず考えられる理由は、そうした高価格なバッグには「価値がある」ということです。富裕層は何かを購入する際には「価値のあるものか否か」を重視します。

高価格なバッグは誰もが買えるわけではなく、希少価値があります。さらに、工場機械による自動生産ではなく手作りされるなど、手間がかけられていることが多いのも特徴です。また高級ブランドは歴史があり、それぞれのアイテムが生まれた背景にはストーリーがあります。だからこそ「ブランド」として支持されているわけですが、その中でも価格が高く点数の少ない高級バッグは、商品価格が高いという意味以上に、価値が高いと言えます。

それゆえに、「資産」として価値の上昇も期待できます。富裕層は、バッグなどのファッションアイテムのみならず、アートやクラシックカー、ワインといったラグジュアリー商品に投資します。その目的は、趣味やコレクター（収集家）としての満足感を満たすこともありますが、複数の対象に分散して投資することで、資産を金融リスクから守るということもあります。

もちろん、先ほど名前を挙げたようなハイブランドの高価格なバッグならなんでもいいという訳ではありません。中でも「価値がある」アイテム、言い換えれば「資産価値がある」アイテムを選ぶわけです。

資産の価値の決め手となるのは、需要と供給のバランスです。「誰もが欲しいのに数が少ない」（需要＞供給）となれば価値が上がり値段も上がります。逆に、「誰も欲しがらないのに数がいっぱいある」（需要＜供給）となれば価値も値段が下がります。

資産価値の高い「バーキン」　4000万円以上の価値があるものも

そうした観点からも、高級ブランドのバッグの中には、資産として持つ意味がある品が存在します。

価値が上がり続けている高級バッグの代表的な存在は、エルメスの「バーキン」です。本体から金具まで、細部に至り厳選された最高級の素材のみを使用しており、熟練した職人が一つひとつ丁寧に手作りしています。店頭販売は一切しておらず、特別な顧客だけが購入できるという、極めて希少価値の高い商品です。欲しいバーキンが手に入るまで、数カ月、時には数年かかることもあるといいます。

バーキンの価格の相場は、1万2000～20万ドル （約130万～2174万円）で、過去10年間の価格上昇率は98％です。2020年の上昇率は17%ですから、さらに大きな収益性を狙うことも、夢ではないかも知れません。

ちなみにオークション史上最高額を獲得したバッグは、「バーキン ヒマラヤ」 です。世界有数のオークションハウス、クリスティーズが2017年に香港で開催したオークションに出品され、約38万ドル（約4131万円）という驚きの価格で落札されました。18Kゴールドの金具に240個以上のダイヤモンドをあしらった、ホワイトクロコダイルのバッグです。「ヒマラヤ」は、ビクトリア・ベッカムなどセレブにも人気の高いシリーズです。

その他、同じくエルメスの「ケリー」とシャネルの「フラップバッグ」の価値が、過去10年間で129～132％も 上昇しています。また、コロナ禍では、アートやクラッシックカー、ワインなどを上回る収益を記録するなど、 注目度が上がっています。

娘や孫に受け継がれる思いと愛情

もう一つ、富裕層が高価格なバッグを愛用する理由があります。質の良いものは大切に扱えば、型崩れしたり色褪せたりせず、長年にわたり使い続けることができます。

そのため、母から娘へ、さらに孫へと、親子二代、三代にわたり、愛用しているバッグを受け継いでいる富裕層もいます。そこには希少価値の高いバッグの不変的な価値以上に、それぞれの世代の思いや愛情が込められているのではないでしょうか。

文・アレン琴子（オランダ在住のフリーライター）
編集・濱田 優（dメニューマネー編集長）

【関連記事】
・なぜ富裕層は法人を設立するのか？
・富裕層がフェラーリなどの「超高級車」を所有する理由
・タダでポイントをためる6つの方法