野村HDが地銀と合弁会社設立へ SBI、東海東京……進む「証券と地銀の連携」

2021/05/11 07:00

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野村證券を傘下に持つ野村ホールディングス <8604> が、千葉銀行など地銀3行とともに、リモートで金融コンサルティングサービスを提供する合弁会社を設立する。野村HDが5月10日、発表した。 証券と地銀との連携では、東海東京フィナンシャル・ホールディングス <8616> が先行、最近ではSBI証

野村證券を傘下に持つ野村ホールディングス <8604> が、千葉銀行など地銀3行とともに、リモートで金融コンサルティングサービスを提供する合弁会社を設立する。野村HDが5月10日、発表した。

証券と地銀との連携では、東海東京フィナンシャル・ホールディングス <8616> が先行、最近ではSBI証券を持つSBIホールディングス <8473> が活発な動きを見せている。今回の野村HDとSBIや東海東京のケースは組み方などで異なるが、地銀が証券などと連携するケースは今後も生まれる可能性が十分にありそうだ。

商品の仲介はせずあくまで助言のみ

野村HDと共同で事業を始めるのは、千葉市に本店を置く千葉銀行、新潟市の第四北越銀行、岡山市の中国銀行。この3行はいずれもTSUBASAアライアンス参加行(地銀10行による広域連携の取り組み)だ。9月(2021年度第2四半期)までに最終契約、準備会社を設立する見込み。

野村HDは会社設立の背景や狙いとして、発表で「新型コロナウイルス感染拡大の影響により、働き方や生活スタイルが変化し、デジタルチャネルを通じたリモートでの面談や取引が拡がって」いると指摘、「証券事業と銀行事業に関するノウハウを組み合わせ、業態を超えた総合的な金融コンサルティングサービスを提供する」と述べた。

金融商品仲介業者とは異なり、金融商品や金融サービスの媒介などは行わず、あくまで助言にとどめるという。

野村證券も地銀との提携を進めている

野村グループが地銀との連携・提携をする動きは今回が初めてではない。

野村證券は昨年(2020年)、島根県松江市に本店を置く同県の第一地銀・山陰合同銀行と業務提携を開始。松江市や米子市など6ヵ所に同行のコンサルティングプラザを共同で設置して、金融商品仲介業務を始めている。これにともなって、野村證券はいくつかの支店・営業所を閉鎖。山陰合同銀子会社のごうぎん証券は廃業している。

今年に入っても阿波銀行(徳島市)と包括提携を発表。個人向けの証券事業を統合する考えで、4月26日に徳島市と鳴門市でコンサルティングプラザをオープンさせたばかり。6月、12月にもそれぞれ吉野川市、阿南市で同様の施設を設置する計画だ。

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SBIは既に7行と資本業務提携、効果が出始めた?

証券と地銀の動きで目立つのは、「第4のメガバンク構想」を掲げるSBIホールディングスを中心とした連合だ。

SBI HDは傘下のファンドとともに、2019年に島根県の第二地銀である島根銀行の株式34%を取得。これまでに、仙台銀、福島銀、筑邦銀など計7行と資本業務提携を結んでいる。

島根銀のケースでは、既に効果が出始めているように見受けられる。島根銀行は2017年中間決算以来、コア業務純益(銀行の本業でのもうけを示す指標)で赤字が続いていたが、今年1月に発表した2020年4―12月期の決算では、コア業務純益(単体)が3億1200万円の黒字。前年同期の2億7500万円の赤字から大幅に回復している。

また、口座数を大幅に伸ばして業界トップに肉薄している楽天証券も、北國銀行と金融商品仲介で提携すると最近発表したばかりだ。こちらは同証券が契約している独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)のファイナンシャルスタンダードと三者によるサービス提供という。

このほかにも、東海東京フィナンシャル・ホールディングス傘下の東海東京証券は、2007年に山口フィナンシャルグループとともにワイエム証券を設立するなど、いち早く全国の地銀と提携して証券ビジネスの合弁会社を立ち上げている。同HDの石田建昭社長はインタビューで、各地の第二地銀との連携を模索している旨も明らかにしている。

最近も、荘内銀行(山形県鶴岡市)と北都銀行(秋田市)を傘下に持つフィデアホールディングス <8713> と金融商品仲介で業務提携すると日経が報じたばかり。

そもそも銀行と証券が組むメリットは

地方経済が厳しさを増し、投資先が減っているせいもあってか、銀行の多くが最近の決算で赤字が続けて出している。

一方の証券も、従来の手数料依存のビジネスモデルの変革という急務が突きつけられている。ネット証券はおろかスマホ証券までも登場し、ただでさえ手数料競争が激しくなっている中で、投資家のニーズや関心がポイント活用や少額投資に向かっており、利益が出しづらくなっているからだ(その点では、今回の野村HDと地銀3行による、商品仲介による手数料ではなく助言によるフィーを得る仕組みは注目といえるかもしれない)。

こうした中で、銀行・証券が組むメリットは、まず取り扱える商品が増えることだ。銀行だけ、証券だけでは扱えない商品やサービスがワンストップで扱えるようになる。また共同で施設を構えることで、支店運営のノウハウを共有でき、コストも大幅に削減できる。

メガバンクのグループであれば、銀行と証券が同じグループ内にあるため、地方で同じ施設に銀行と証券が支店・営業所などを設けて連携できるが、地銀と大手証券にはそれができない。両者が連携することで、そうした点が補えるというわけだ。

地銀との連携を深めているのは証券会社だけではない。大手の銀行グループも同様だ。りそなホールディングス <8308> も関西みらいフィナンシャルグループ(大阪市)を完全子会社化している。

金融サービス仲介業の誕生にも高まる期待

さらにこうした金融機関の動きのみならず、今後、新しく始まる「金融サービス仲介業」の仕組みも注視しておきたい。これは、銀行、証券、保険と業態ごとの縦割りだった金融商品の仲介を、一つの登録ですべてできるようにしようという試みだ。

現在は、銀行、証券、保険の複数業種にまたがって商品を仲介しようとすると、それぞれ複数の登録をしなければいけない。すなわち銀行代理業者(銀行法)、金融商品仲介業者(金融商品取引法)、保険募集人や保険仲立人(保険業法)だ。

こうした仕組みでは業者の負担も大きいし、ユーザーにとってもそれぞれの事業者のところで別々にサービスを受ける必要がある。

そこで、業者が1つ登録すれば、銀行・証券・保険すべてのサービスをワンストップで提供できる仕組みを作ろうというわけだ。実現に必要な金融商品販売法の改正案は2020年6月に国会で成立しており、1年半以内に施行される予定だ。

今後も銀行・証券など金融機関同士の連携・提携が生まれ、金融サービス仲介業のような新しい仕組みが登場し、さらには新しいテクノロジー活用も今まで以上に進むだろう。金融機関も生き残りをかけ、よりサービスを充実させて競争に励むはずだ。

こうした変化にあわせて考えなければいけないのがコンプライアンス、そして投資家・消費者の保護だ。しかし規制が行き過ぎても、利便性は上がらない。金融機関にとっても、投資家・消費者にとっても望ましい、バランスのとれた環境の整備に期待したい。

文/編集・濱田 優(dメニューマネー編集長)
画像・VTT Studio / stock.adobe.com

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