岸田首相が6月15日夕、今国会の会期中には解散しないとの考えを表明したことで、日経平均先物が報道直前の3万3400円から3万3110円と300円程度急落した。解散総選挙と株価の関係は? 今後日経平均はどう動くのだろうか?
株式市場の経験則「解散総選挙は、買い」 過去8回は全勝
日経平均先物が売られたのは、株式市場には「解散総選挙は買い」という経験則があるからだ。
2000年以降で解散総選挙は8回行われている。解散前日の終値と投開票日前日の終値を比較すると、日経平均は全勝で平均5.2%の上昇だった。
2005年の小泉内閣での郵政民営化、2009年の民主党への政権交代、2012年の自民党への政権交代からのアベノミクスなどがあった。
なぜ解散総選挙は株高になるのだろうか?
与党が解散するのは、選挙に勝てる公算が高いときだ。勝てる公算が高いと判断するのは、内閣支持率が高いときである。
支持率が高い上に、選挙期間中には政策面などで前向きな話が多く出て、選挙後の改革期待が高まることが株高の要因だとされている。
NHKによると内閣支持率は、2022年11月と2023年1月に33%と岸田内閣発足以降で最低をつけていたが、2023年5月では46%まで上昇している。G7サミットなどで指導力を発揮したこと、日本株高も支持率の上昇を支えている可能性が高い。大きなスキャンダルがないことも支持率を押し上げているもようだ。
現在の衆院議員の任期は2025年10月まで2年4ヵ月残るが、内閣支持率上昇を背景に、自民党内で早期解散期待がでている。もっとも、長男の秘書官の更迭問題やマイナンバーカードのトラブルなどで6月の支持率は43%とやや低下した。しかし、比較的高い水準を維持している。
解散見送りでも相場の基調は強い 解散総選挙で「改革」気運高まる
岸田首相の解散見送り発言後、翌16日の日経平均は朝方298円安まであったものの、午後はプラスに転じ、結局220円高で終えた。
今回の日本株の上昇は、日本のデフレ脱却による成長路線への復調期待、低PBR・割安銘柄に対する東証の大号令がきっかけで海外投資家が買いだしたことが背景とされている。
大きな押し目もなく上げてきた市場の絶好の押し目と考えた投資家も多かったのだろう。
解散総選挙で「改革」気運が高まると、2005年と2012年は、選挙期間だけでなく選挙後も株高の「第2幕」が続いた。
株式市場は解散総選挙が今回見送られても、「改革」期待でもう一段の株高を織り込みはじめる可能性もあると期待しているのではないだろうか。
岸田内閣の骨太の方針で日経平均はプラスに転じる
2023年6月16日、岸田首相の改革案「骨太の方針」が決定した。未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現を目指し、リスキリングの推進や失業給付制度の見直しなどを盛り込んだ。日本が長らく続いたデフレを脱し、成長路線を取り戻すきっかけになり得る。
16日の日経平均がプラスに転じたのはこの改革への期待が高まったことも大きな要因だろう。
専門家の見解「解散は今後ある」「相場が強い」
マネックス証券のチーフストラテジスト広木隆氏は、「今回は解散見送りとなったが、いずれはやるだろう」「株式市場にとっても、「解散・総選挙で株高に弾み」という好材料が温存された格好だ」としている。
野村証券のシニア・ストラテジスト小高貴久氏は6月16日、「きょうはいったん下げているものの、このところ売買代金は多く、売りをこなしながらも上げる強さがある。日本の株式相場が調整局面に入るとはみていない」と話した。
骨太の方針は、抜本的な改革ではなく、力強さに欠けるとの見方もある。企業がこの機会を活かして改革できるかが、株式市場の“第2幕”を決めることになりそうだ。
文/編集・dメニューマネー編集部
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