投資家の間で、ユニクロを運営するファーストリテイリング <9983> の株価動向に関心が高まっている。7月末時点の同社の株価次第では、日経平均株価が急落することもあり得るからだ。投資家が月末までに把握しておきたい「11%の攻防ライン」について見ていこう。
日経平均株価の問題点とは?
日本株の代表的な株式指数である日経平均株価は225銘柄で構成されており、もう一つの代表的な指数の東証株価指数(TOPIX)は東証プライム市場の全銘柄(2023年5月末時点で2157銘柄)で構成されている。
TOPIXは構成銘柄の時価総額を加味した加重平均で算出されており、時価総額が日本一のトヨタ自動車 <7203> の株価の影響を受ける。比重にして2023年5月末時点で3.44%だ。
一方の日経平均株価は、構成銘柄の株価の単純な平均のため、株価の高いファーストリテイリングの影響を大きく受ける。
7月21日時点における同社の比重は10.66%だ。同社の株価動向が日経平均に与える影響がそれだけ大きいことを表している。
2022年から設けられた「11%ルール」とは?
ファーストリテイリングのような値段が高い企業の株価動向に左右されやすい日経平均株価は、値段の高い銘柄群を狙って売買すれば意図的に指数を操作しやすく、この点が従来から問題として指摘されてきた。
そのため一般的には、加重平均で算出されるTOPIXのほうが「相場全体の実態を表す」と言われている。
その問題への対応として2022年から「11%ルール」が設けられた。2023年7月末時点で寄与度が11%を超える銘柄は、日経平均の算出時に計算上の株価を0.9倍(10%安)にするというルールだ。
7月21日時点でのファーストリテイリングの寄与度は、10.66%と微妙な位置にある。もし11%を超えれば、日経平均を新たに算出する際にファーストリテイリングの株価を0.9倍にして計算するため、日経平均はその分、下落する。
SMBC日興証券の試算によると、日経平均の時価総額が3000億円ほど減少する。多くのファンドが日経平均株価に連動するファンドを運用しており、10%安水準に向けた調整売りをする必要がある。
仮に7月末に11%を割れば、調整が不要になり買い戻しが進む可能性がある。逆に11%を超えれば、9月末のリバランスに向けて売り圧力が強まる可能性がある。もしくは、7月末の決定をターゲットに回圧力が高まるかもしれない。
「11%」を挟み、このようなプロの思惑が交差しているのが今の日経平均だ。
さらに11%ルールは、今回で打ち止めではない。日経平均で寄与度が高い銘柄を段階的に下げていくのが目的なので、2024年7月末には水準を10%に下げることが決まっている。
「インデックス・イベント」を投資に活かす
こうした株価指数のルール変更を「インデックス・イベント」と呼ぶ。
日経平均株価の構成銘柄の変更も、大きなイベントの一つだ。たとえば日経平均に連動するETFを運用している運用会社は、A銘柄が日経平均から除外され、B銘柄が日経平均に新規採用された場合を考える。運用ファンドを日経平均株価と完全に連動させるためには、基準日にAを売り、Bを買う必要がある。当然Aは下がり、Bは上がる可能性が高い。
このようなファンダメンタルズと関係ない売買が市場を動かすことがあるのも株式市場だ。
足元はファーストリテイリングの株価動向に注目し、今後の投資に活かしたい。
文/編集・dメニューマネー編集部
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