株式投資

投資は心理戦?株価を動かす買い手と売り手の力関係【連載・第1回】

2023/08/04 07:00

https://money.smt.docomo.ne.jp/image/tyYCO8vXTOeNGfQWjNGL-g.jpg
「投資は美人投票」と言われる由来は、経済学者のケインズの言葉にあります。彼は、プロがする投資は、「投票者が写真100枚の中から最も容貌の美しい6枚を選び、その選択が投票者全体の平均的な好みに最も近かった人が賞品をもらえるという新聞投票に見立てることができる」と述べたそうです。 ここで重要なのは、「自分が最も美しいと思う

「投資は美人投票」と言われる由来は、経済学者のケインズの言葉にあります。彼は、プロがする投資は、「投票者が写真100枚の中から最も容貌の美しい6枚を選び、その選択が投票者全体の平均的な好みに最も近かった人が賞品をもらえるという新聞投票に見立てることができる」と述べたそうです。

ここで重要なのは、「自分が最も美しいと思う写真を選ぶ」のではなく、「他の投票者の好みに最もよく合うと思う写真」を選ぶということです。これは株式投資に関しても同じです。市場参加者の多くが「値上がりするだろう」と思う会社を選ぶことが、重要です。

昨今はAIやロボットなどアルゴリズムによる投資判断も珍しくありませんが、それでも市場参加者のほとんどは人間です。市場で勝つには、人間の心理を知ることが欠かせないのです。

人間とは、ライバルである他人だけを指すのではなく、自分も含みます。自分を客観視することは簡単ではありません。つい思い入れ、思い込みで判断を誤るものだからです。

本連載では、投資・運用を成功に導くために、「人間の心理」に迫ります。第1回の今回は、買い手と売り手の力関係による投資家の心理を取り上げます。

株式市場で買い手と売り手の力関係が注目されるケース

たとえばソニーのゲーム機プレイステーション5は、発売後品薄の状態が続き、オークションなどで定価の倍以上の値段で取引されていました。

しかし最近では供給が安定して、量販店で普通に定価で買えるようになりました。買い手優位から売り手優位に力関係が変化した典型例です。

株式市場で買い手と売り手の力関係が注目されるケースの中には、次の3つがあります。

ケース1 「発行済み株式数の少ないIPO」──買い手が強気になりやすい

株式の新規株式公開(IPO)は、買い手が優位になることが多いイベントで、発行済み株式数が少ない場合は、より買い手優位となり、株価も上昇しやすくなります。

発行済み株式数とは、会社が既に発行した株式の数です。新規上場する企業は、新たに株式を発行したり、自社や大株主が持っている株式を売り出したりします。

そのため、発行済み株式数が小さい会社の株式ほど、手に入れにくくなり、買い手優位となるのです。

ケース2 「株式の売り出しや新株発行」──売り手が不利になりやすい

企業が資金を調達するために新株を発行したり、大株主が株式を売り出したりするケースでは、売り手が不利になり、株価の下落につながることがよくあります。

増資によって発行済み株式数が増えると、既存の株主の持っていた権利も薄まってしまうため、売り手に不利になります。

最近では、モバイル事業の苦境で資金を調達するため、新株の発行による増資を発表した楽天グループ <4755> のケースがこれに当たります。

楽天グループの株価は、増資の報道があった5月15日の高値749円から直近の約532円(7月21日終値)まで約3割値下がりしています。

ケース3 「期末」──機関投資家は売りたくなくても売らないといけない場合も

個人の投資家は、持っている株を売りたいときに売ればいいのですが、年金や投資信託などの機関投資家は、決算で損益を確定させたり、資産の配分を調整(リバランス)したりするため、期末や四半期末に渋々売らないといけない場合があります。

たとえその株が上がると思っていても、売らなければいけないことがあるのです。

投資家の心理を踏まえた投資の行動にも使える

買い手と売り手の力関係による値動きのケースは、この他にもあります。こうしたケースは投資行動にも応用できます。

たとえば「機関投資家の期末の売りで株価が下がっている時は、欲しかった株を安く買えるタイミングになるかもしれません。

文・北川茂樹(Webライター)
編集・dメニューマネー編集部
画像制作・田之尻美希(デザイナー)

【関連記事】
「老後破産」しないために読みたい
ブラックリストでも作れるクレカ5選【PR】(外部)
今持っている株を売って新NISAで買い直したほうがいい?
会社に転職活動がバレない転職サイトの機能
「dジョブスマホワーク」で高ポイントをもらう方法