松屋が攻めている。冬はジョージア料理やタイ料理、夏はバターチキンカレーや回鍋肉……。牛丼店らしからぬラインナップは好評で、客も大満足のようだ。では、客を満足させている松屋だが、従業員を「年収面」で満足させることには成功しているのだろうか。
松屋の平均年収の推移は?
まず松屋を運営する松屋フーズの平均年収の10年分の推移をざっと並べてみよう。
平均年収の推移(すべて3月期)
会計年度 | 平均年収 | 従業員数 |
---|---|---|
2021年 | 6,379,348円 | 37人 |
2020年 | 6,305,476円 | 43人 |
2019年 | 5,131,257円 | 44人 |
2018年 | 5,184,425円 | 1,374人 |
2017年 | 5,218,485円 | 1,287人 |
2016年 | 5,307,707円 | 1,198人 |
2015年 | 5,309,907円 | 1,177人 |
2014年 | 5,150,436円 | 1,201人 |
2013年 | 5,005,314円 | 1,263人 |
2012年 | 5,416,511円 | 1,206人 |
平均年収は長らく500万円台前半だったが、2020年3月期に600万円台まで一気に増えている。「これでは従業員も大満足なのでは……!」と思うかもしれないが、それは早合点だ。
従業員数を見てほしい。人数が1,000人台からガクンと落ちている。これは「株式会社松屋フーズ」を2018年に持株会社化して「株式会社松屋フーズホールディングス <9887> 」とし、大半の従業員を持株会社の子会社に所属させる形にしたからだ。
この結果、年収が高めの社員が持株会社に集まることになり、平均年収は600万円台まで一気に増えた。つまり、この状況をそのまま実態としては受け取れない。
クチコミサイトの平均年収データも加味すると……
前述の通り、こうした状況では松屋の平均年収の実態が分からないのではないか、と思う人もいるかもしれないが、こういうときに平均年収のクチコミ(口コミ)サイトが役に立つ。
社員クチコミサイトを運営するオープンワークによれば、大半の従業員が所属する子会社の平均年収はクチコミの平均で460万円だという。
もちろん、クチコミによる平均なので正確さには欠けるが、持株会社制に移行する前が500万円台前半だったことを考えると、少なくともこの数年で松屋の従業員の平均年収が劇的にアップしている、ということはなさそうだ。
むしろ持株会社制に移行する前、松屋の平均年収は下落傾向にあったため、口コミの通り、すでに子会社の平均年収は400万円台になってしまっているのかもしれない。
現状、従業員は年収面で“大満足”ではないかも
ちなみに、コロナ禍の影響を受けた2021年3月期を除けば、松屋の売上高は直近5年において右肩上がりの状況にある。一方、純利益は2021年3月期を除けばほぼ横ばいの状況だ。売上が伸びても純利益が増えなければ、なかなか会社としては従業員への還元がしにくい。
つまり現時点では、松屋の従業員は年収面では決して「大満足」というわけではなさそうで、最近の業績から考えれば、今後も目覚ましく年収が上がっていくという可能性も低そうだ。
ただし冒頭でも紹介したように、最近力を入れているメニュー開発が業績にしっかりと寄与していくことになれば、じわりじわりと年収が増えていくことも十分に考えられる。松屋を訪れる際には新メニューを試し、同社の将来に思いを馳せてみてはいかがだろうか。
文・岡本一道(経済ジャーナリスト)
編集・濱田 優(dメニューマネー編集長)
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