日経平均株価はここ10年で約3倍になり、上昇基調が続いていますが、「景気の良さを実感している」という人はあまり多くないのではないでしょうか。それを裏付けるかのように伸びているのが「100円ショップ業界」です。
100円ショップの業界売上高は11年連続で増加中であり、2020年度は過去最高を更新することがほぼ確実だそうです(帝国データバンクの調査による)。店舗数も過去10年で4割増えました。
実は上場していないダイソー JTBやサントリーも
100円ショップ業界の雄(最大手)は、言わずとしれたダイソー(会社名は株式会社大創産業)です。誰しもが一度は利用したことがあるでしょう。そんなダイソーですが、実は非上場会社であることをご存じでしょうか。
日本ソフト販売の調べによると、2021年1月の店舗数ランキングでは、2位のセリアに約2倍の差をつけてダイソーが1位となっています。
しかし、業界2位のセリア <2782> 、3位のキャンドゥ <2698> 、4位のワッツ <2735> が軒並み上場しているのに関わらず、ダイソーは上場していません。
ダイソーの売上高は約5,000億円、国内店舗は約3,500、海外店舗は約2,200であり、大企業と呼んで差し支えないでしょう。大企業なのに上場していない企業には、他にもJTBやサントリー(子会社のサントリー食品インターナショナルは上場)などがあります。
これらの企業は、なぜ上場しないのでしょうか。ここからは、株式公開しないメリットとデメリットについて解説します。
上場のメリット
そもそも上場の本来の目的は、新株を発行し、株式市場からリスクマネーを集めることです。
最近、米国では新株を発行しない上場方法「ダイレクトリスティング」が行われることがありますが、あくまでイレギュラーなパターンと言えるでしょう。上場することによって、増資や社債による「証券市場からの新たな資金調達」も行いやすくなります。
また、上場することで会社が有名になったり、信用力が増したりすることで、新規顧客を獲得しやすくなったり、優秀な人材を確保しやすくなったりします。既存社員のモチベーションも上がることでしょう。
さらに、上場することによって、創業者(一族)の保有株を現金化し、創業者利潤を確保することができます。多くの人には関係ありませんが、基本的には創業者が上場するかどうかの最終判断を下すため、重要なポイントと言えるでしょう。
上場のデメリット
それでは上場のデメリットには何が挙げられるでしょうか。
まず、上場準備や上場基準を満たすためのガバナンス体制の構築に多大な労力と資金がかかります。上場後も東証が求めるガバナンス体制やIR体制を維持する必要があります。監査法人への報酬だけで、年間平均で約6,700万円かかっているというデータもあります。
さらに、株主の意向を経営に反映させる必要があります。オーナー経営の場合は、基本的にオーナー1名が物事を決定できましたが、多くの場合、上場するとそうはいきません。なかには「クチうるさい株主」も存在します。上場株式は誰でも購入できますので、敵対的買収が発生する可能性もあります。
「知名度がある大企業が上場するとき」に確認したいこと
上記以外にも、多くのメリットとデメリットが想定されます。上場するということは、これらのメリットとデメリットを天秤にかけたうえで、メリットのほうが大きいと判断しているということです。
ダイソーのように「大企業だけど上場していない会社」は、これらのメリットとデメリットを天秤にかけたうえで、デメリットのほうが大きいと判断しているのでしょう。
ダイソーの詳細の財務状況は分かりませんが、資金調達に問題がないのであれば、ダイソーのように既に十分有名な会社にとって、上場のメリットはあまり大きくないのかもしれません。言い換えれば、ダイソーが上場を行うときは、経営陣のなかで、今までとは異なる何か大きな決断が成されたと捉えるべきでしょう。
毎年、100社前後の企業が東証に新規上場しています。基本的にはベンチャー企業が多いですが、ときおりダイソーのように知名度がある大企業が上場することがあります。そのような銘柄を見つけたら、「なぜ今になって上場する気になったのだろう。調達した資金はどのように使う予定なのだろうか」という点に注目してみるのも面白いでしょう。
文・菅野陽平(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
(2021年8月14日公開記事)
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