社会現象になったアニメ「鬼滅の刃」。その制作会社として知られるユーフォーテーブル(東京都中野区)が4億円を超える所得を隠し、約1億4,000万円を脱税したとして、同社と代表者が起訴されてから1ヵ月あまりが経ちました。
このニュースに、多くのファンは心を痛めたことでしょう。高所得者(法人含む)は少しでも税負担を小さくする「節税の呼吸」を身につけることは重要ですが、「脱税の呼吸」を行ってはいけません。
高所得者になると聞こえてくる「悪魔のささやき」
筆者は前職の野村證券時代を含めて、多くの富裕層や高所得者を見てきましたが、一般論として大金を稼ぐと、「少しでも支払う税金を少なくしたい」とあの手この手で節税を図る人が多くなることは事実です。
多くの人は合法的な範囲内に留まりますが、なかには一線を超えてしまう人がいます。実際、明らかに違法と思われるスキームを持ってきて「これで節税しても大丈夫かな?」と聞かれたり、「違法だと思うけど、刺されていないから継続している」という人に出会ったりすることは時々あります。
脱税は違法行為ですし、当然、筆者も推奨しているわけではありません。しかし大金を稼ぐと、高所得者には「これくらいならバレないのではないか」という「悪魔の囁き」が聞こえてくることも、また事実だと思います。
「悪魔のささやき」が聞こえてくる理由
なぜ「悪魔のささやき」が聞こえてくるのでしょうか。一般論ではありますが、要因は何点か考えられます。
まず、日本の所得・住民税や相続税は累進課税であり、稼げば稼ぐほど(資産があればあるほど)税負担が重くなることが挙げられます。さらに大きな要因は、その累進課税の税率が高すぎることでしょう。
所得・住民税の最高税率は55%(所得税45%+住民税所得割10%)、相続税の最高税率も55%です。フローに対しても、ストックに対しても、半分以上が税金で持っていかれてしまいます。
高所得者になると、納税額も半端ではありません。「納税額だけで一般サラリーマンの年収何名分に相当」ということもザラです。少しでも負担を減らしたいという気持ちが強くなることは致し方ないでしょう(だからといって脱税して良いわけではないですが)。
また、高所得者になると、嫌でも様々な人が寄ってきます。なかには違法なスキームを提案してくる人もいるでしょう。高所得者になると、様々な情報が集まりやすいということも挙げられます。
法人は個人に比べて大きなお金が動きやすく、決算操作も行いやすい
ユーフォーテーブルの場合は、報道によると売上を実際よりも低く申告し、法人税の支払いを逃れていたようです。法人税は、基本的には累進課税ではなく、会社規模にもよりますが、ざっくりと約30%の税率です。
報道が事実だと仮定すれば、ユーフォーテーブルには、上記の累進課税の要因は当てはまりません。ただ、法人は個人に比べて大きなお金が動きやすく、30%とはいえ、納税額の絶対値で言えば相当大きな金額になるはずです。
同社は2015年、2017年、2018年という「飛び年」の3期で所得を隠していたので、この3期中に何か大きな収入が入ってきて、税金を取られるのが惜しくなり、思わず隠してしまったのかもしれません。
補足として、法人は個人に比べて、経費の幅が広く、発注先や子会社との取引を絡めた決算操作が比較的行いやすいということも抑えておきたいポイントです。
国税庁が本気を出せば、ほぼ全ての脱税はバレる
多くの高所得者には「これくらいならバレないのではないか」という「悪魔の囁き」が聞こえているはずです。
しかし、国税庁には「質問検査権」という強い権限を与えられています。取引先や金融機関に資料の開示を求めることができますので、要は「国税庁が本気を出せば、ほぼ全ての脱税はバレる」ということです。
言うまでもないことですが、「悪魔のささやき」には耳を貸さず、正しく申告するようにしましょう。
文・菅野陽平(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
(2021年8月20日公開記事)
【関連記事】
・トヨタ、ソニーほか有名企業の年収、給与・ボーナス5選
・初心者向け!ネット証券オススメランキング(外部サイト)
・「水道代」節約のNG行為5選
・株主優待をタダ取りする裏ワザとは?(外部サイト)
・銀行員が見た「FIRE」を達成した3つのタイプ