特に首都圏では、神奈川県や千葉県に住みながら職場は東京都といったことが珍しくありません。そして実は、働く場所によって、給料が異なることがあります。距離が近くても都道府県が異なるだけで最低賃金が異なるからです。2021年10月には、全国的に最低賃金が大幅に値上げされます。最低賃金アップのタイミングで、県境をまたいで働くのもアリかもしれない──？

最低賃金は働く場所で変わる

最低賃金とは、雇い主が支払わなければならない最低限の時給のことです。都道府県ごとに最低賃金が決められており、雇い主は最低賃金を上回る時給を設定しなければなりません。最低賃金は、正社員や派遣、アルバイト、パートなど働き方の区別なく適用されます。

関東地方を例に、都県ごとの最低賃金の違いを見てみましょう（2021年10月改定後）。

たとえば、群馬県と埼玉県は隣接していますが、最低賃金は91円も違います。埼玉県と千葉県はともに東京都に隣接していますが、千葉県より埼玉県のほうがわずか3円ですが高いのです。

最低賃金は、働く人の住所ではなく、事業所の住所で決まります。どこに働きに行くかによって、適用される最低賃金も変わるということです。

10月から最低賃金が大幅引き上げ！

最低賃金は毎年秋ごろに改定されます。2021年は、10月上旬から最低賃金が引き上げられる予定です（引き上げの実施日は都道府県によって異なります）。都道府県ごとに若干違いはあるものの、基本的には9月以前と比べて28円引き上げられました。

現在の時給が改定後の最低賃金を下回る場合、雇い主は時給を引き上げなければなりません。そのため、最低賃金アップのタイミングで、時給が上がることがあります。

自分が働いている都道府県の最低賃金と時給を見比べ、時給が最低賃金を下回っていないかチェックしてみましょう。また、県境に住んでいるなら、最低賃金の違いを踏まえて働く場所を見直すのも1つです。

正社員の場合は月給を時給換算して判断

時給が最低賃金を下回っていた場合、雇い主は最長2年までさかのぼって最低賃金と時給との差額を支払わなければなりません。正社員の場合は、月給を時給換算して、最低賃金を超えているかどうかを判断します。

最低賃金を下回る時給で働かせることは、法律違反です。気づいた時は、労働基準監督署の相談窓口に連絡しましょう。信頼関係があるなら、雇い主に確認してみるのも1つです。

10年で約170万円の差？引越し前には最低賃金もチェックしよう

たった100円程度の違いと甘く見てはいけません。長い目で見ると、最低賃金の違いは生涯所得に大きな影響を及ぼします。

東京都の最低賃金1,041円と高知県・沖縄県の820円を例に、1回4時間、週4回（1ヵ月で16回）働いたとして、10年でどのくらい差が出るかを計算します。

1,041円×4時間×16日×12ヵ月×10年＝799万4,880円
820円×4時間×16日×12ヵ月×10年＝629万7,600円

収入の差　169万7,280円

10年間で約170万円、30年で約500万円も収入に差が出るという衝撃的な結果でした。物価なども考慮する必要はありますが、住む場所によって所得に違いが出る可能性について知っておく必要があります。

隣り合っている県でも意外と最低賃金に差があるケースも多いので、引っ越しやマイホームの購入を検討中の方は、最低賃金の違いも考慮してください。

文・木崎 涼（ファイナンシャル・プランナー）
編集・dメニューマネー編集部

【関連記事】
・9月から手取りが減るのはどんな人？
・初心者向け！ネット証券オススメランキング（外部サイト）
・読める？「浦塩斯徳」ってどこ？
・株主優待をタダ取りする裏ワザとは？（外部サイト）
・年間6000円！丸亀製麺で使える割引券